あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


律はゆっくりと私の方へ歩み寄ると、逃げ場をなくすように机の上の私の両脇に手をつき、ぐっと顔を近づけてきた。
息が触れ合いそうなほどの距離で、熱い黒い瞳がまっすぐに私を射抜く。

「俺たちのあの『残り3%』の時間があったから……俺たちはまた笑えたし、前を向けたんだ。写真見たら分かんだろ。お前が、充電器になって、俺を満たしてくれた」

律の大きな手が、私の頬にそっと触れる。
少し固くて温かい指先が、こぼれ落ちた涙を優しくすくい上げた。

「……これからは、もう、ただの幼馴染じゃない」
「律……」

目の前にある律の真剣な目を見つめると、律はごくりと唾を飲み込んだ。
上下に動いた喉仏に、鼓動が早くなる。

「好きだ、あおば」

低く掠れた声が耳元に響き、心臓が破裂しそうになった。

「小さい頃から、俺にはお前しかいないんだよ……」

やっと……。
やっと、律が好きだって言ってくれた。
どうしよう……。
全身が心臓になったみたいに、ドクドク揺れて呼吸が乱れる。

「あおば……俺の彼女になって」

少女漫画の主人公になったみたいな、甘くて強引な告白。
全身の血が逆流するくらいドキドキして、涙がボロボロと溢れ落ちた。

「お……遅いよ……っ!バカ律っ」
「……返事は?」

律が不安げな、私の気持ちをさぐるような眼差しで見つめてくる。

「……私も、ずっと前から、律のことが大好き!多分、律よりももっと早く好きになって……」

言い終わるより早く、律の手が私の後頭部を優しく引き寄せ、強く抱きしめられた。
律の深い体温と、首元から香る懐かしい汗と太陽の匂いが全身を包み込む。
背中に回された律の腕の強さに私も負けじと、強く抱きしめた。

「ああ、やっと言えた」

律がさらにギュッと抱きしめて、ため息を吐くように耳元で囁く。

「やっと、お前を抱きしめられた」

律は私から体を離すと、コツンとおでこを合わせてきた。
そして、私の目を見て、ニカっと歯を見せて笑う。
私も律の真似をして、ニカっと歯を出して笑った。

やっと、素直になることができた。
これも全部、色々とサボってきたことが良かったんだよね?
それも、ひとりじゃなく、律と二人でサボったのが良かったんだ。


幼馴染から恋人へ。
長かった片思いが終わった。