吉野公園の展望台。
桜島を望む快晴の空の下で、律は右足に何度も鈍い違和感を覚えながら、それを私に隠すように遠くを見つめていた。
どこか不安げに眉をひそめ、薄く開いた唇から漏れる息。
膝の上に置かれた手のひらにギュッと力が入っている、あの痛々しいほどの横顔。
めくる指先が止まらない。
そこに収められていたのは、楽しかった日々じゃない。
幸せな夏が崩れ落ち、絶望の底へ叩きつけられ、そこから二人が少しずつ息を吹き返していくまでの『感情のグラデーション』そのものだった。
現実から逃げたくて向かった霧島。
そこで出会った駄菓子屋のおじさんの家で、ぎこちなく二人肩を寄せ合って撮った写真。
霧島らしいところはないのに、私たちだけがどこで撮られた写真か分かればそれでいいんだ、って律は言ったよね。
怪我が完治して、律がサッカーに復帰した日。
前髪から汗が垂れて私にだけみせてくれる笑顔もあった。
カメラを向けた私の指が写り込んでいて少しブレているけれど、それでも律のかっこよさは隠しきれていない。
そして、残りも少なくなった枚数。
私が知らないうちに律が密かに撮っていた写真もあった。
