「うん、知ってる。おばさんから聞いてたから。頑張ったな」
律はふっと口元を緩めると、机の上に置いてあったビニール袋の中から、少し厚みのある現像袋を取り出し、私に手渡してきた。
「これ、ついに現像できたぞ。あおばが帰ってきたら、絶対この場所で渡そうと思ってさ。」
「え?現像したんだ。写真、もう見たの?」
「うん。やっぱり何枚かブレてたり俺らの指が写り込んだりしてたけどな。でも、結構いい写真ばっかだったぞ。見てみろ」
私は使い古された木製の机に腰掛け、シールを剥がして写真の束を取り出した。
使い捨てカメラに収められていた27枚のフィルム。
現像された写真を手に取り、1枚めくるごとに、夏の光と風が、鮮烈な映像となって頭の中に溶け出していく。
照国神社の六月灯。
サッカー部のみんなや浴衣姿の女子たちに嫉妬して、逃げ出した先の公園。
そこで二人で見上げた打ち上げ花火。
嫉妬で歪んだ私の顔が少しブレて写っている。
夜空がドーンと大きな音を立てて大輪の光を咲かせた瞬間、パッと明るく照らし出された律の瞳。
その瞳の中に小さく花火が映り込んでいて、隣に立つ私の浴衣姿を照らしていた。
この旧校舎の窓辺。
点数の悪いテスト用紙で作った紙飛行機を、投げやりに空へ飛ばす律の遠くを見つめる瞳。
その隣で、どうしていいか分からずに口をポカンとあけて、眉をハの字にして立ち尽くしている私の情けない顔。
