あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


九州大会の結果は、ゴールド金賞。
だけど、目標だった全国大会への推薦枠には、あと一歩届かなかった。
3年の先輩たちは、高校生活最後の大会が終わり、悔し涙を流していた。
神崎先輩も結果発表の時に、太もも辺りで拳を強く握り、静かに涙を流していた。
初めて見た、先輩の悔し涙。
今までどれだけの時間を吹奏楽部に費やしてきたか。
途中で逃げ出してしまった私だけど、部員一人一人がこの吹奏楽部に捧げてきた熱い思いは、よく知っている。
このメンバーで大会を目指すのは、もう、これが最後。
それぞれが全てを出し切った夏が……終わった。

私は、残念だったけど、不思議と涙は出なかった。
私の胸に広がっていたのは、驚くほど晴れやかで温かい達成感だった。
逃げて、サボって、遠回りして辿り着いたステージ。
そこで響かせたあの音には、私の17年間のすべてが詰まっていた。
一つも、悔いなかった。

高速バスで、夕暮れ時の鹿児島へと戻ってきた。
楽器を部室に置き、私は軽い足取りで旧校舎へと向かう。
夕陽が赤く染める木造の廊下を歩いていくと、どこか心が落ち着くキシキシという足音が響いた。

あの日、二人で部活をサボり始めた、思い出の空き教室。
ガラリと引き戸を開けると、茜色の光が差し込む教室の窓辺に、律が一人で腰かけていた。

「……おかえり」

ユニフォーム姿の律が、ゆっくりと立ち上がる。

「ただいま、律。ゴールド金賞だったよ。全国には行けなかったけど……私、やりきったよ」