あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


ホール全体の空気を一瞬で塗り替えて響き渡った一音。

それは、多分、みんなが思うような綺麗な音じゃない。
傷つき、苦しみ、汗だくでもがいて、充電を満タンにした、私だけの音色。
律と逃げ回った日々は、今の私にとって、確かに、キラキラと輝く道標(みちしるべ)になっていた。

たった一音で、ホールの空気が変わった。
審査員たちのペンがピタリと止まり、客席の観客が背筋を伸ばしてステージの私を凝視する。
きれいに整えられた他校の演奏を遥かに凌駕する、生命の躍動。
私にしか出せない感情の渦が、ホールを飲み込んでいく。

ステージの照明が涙で滲む。
あの夏、がむしゃらだった私たちは、確かにここに生きている。

正解なんて、誰かに与えられるものじゃない。
自分の歩んだ道こそが正しい道なのだと、私の音が福岡の空を越えて、遠く離れたあの人の元へ届くように、どこまでも高く突き抜けていった。