あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「プログラム8番――」

アナウンスが響き、眩いばかりのスポットライトの群れが、私を容赦なく射抜く。

巨大なホールの、ひな壇の上段。
自分の鼓動の音と、深呼吸の音が会場全体に響いているんじゃないかと思うくらい、神経が研ぎ澄まされている。
磨き上げられた床をしっかりと踏み締める。
胸のポケットに忍ばせたお守りに触れ、昨夜の電話で聴いた律の強気な声が脳裏に蘇った。

『お前がどんだけ遠くにいたって、俺の耳にはお前の一音目から全部届いてんだからな』

充電は、もう完璧だ。
親と言い争った夜も、部活で孤独だった日々も、律と泥をなめ合った時間も、世間の正解から外れてサボったあの雨の日も——すべてが、この17歳の私だけの「正解」のためにあった。

指揮者のタクトが静かに上がった。

会場から音が消える。
完璧な静寂。
私は深く、深く、体中の空気をすべて入れ替えるように息を吸い込んだ。

おじさん、見ててください。
私、立ち直りました。
おじさんの言葉のおかげで、今、私は夢だったステージに上がっています。

タクトが振り下ろされ、私のソロパートの一音目が放たれた。