絶望とプレッシャーで擦り切れて、今にも途切れてしまいそうだった心のバッテリー。
何もかもを投げ出して部活をサボり、霧島まで逃げたあの時間があったからこそ。
カラカラだった私たちの心に、少しずつ、少しずつ、かけがえのない熱が溜まっていったんだ。
立ち止まることは、終わりじゃない。
サボることは、逃げじゃない。
それは、傷ついた心が再び明日へ踏み出すための、愛おしい『充電』の時間だったんだ。
今すぐにでも切れそうな充電は、あの遠回りによって、今や溢れんばかりのやる気になって私たちの胸の中で満ちている。
「白波さん」
声をかけてきたのは、チューニングを終えた神崎先輩だった。
私はトランペットを胸に抱えたまま、神崎先輩を見上げる。
「なんか、めっちゃいい顔してるね」
「先輩、ありがとうございます……私、今までしてきたこと、全く後悔してません。あの時期があったからこそ、今ここに立っていられてるんだなって、そう思ってます」
