あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


先輩は自嘲気味に微笑むと、夜景に向かって背を向けた。

「ああ……、やっとスッキリしたかな。白波さんの答えはわかってたけど、直接フってもらってさ」
「神崎先輩……ありがとうございます」

私が頭を下げると、神崎先輩は優しく口角をあげた。

「さっ、部屋に戻って明日に備えないとね。明日は、白波さんの『一番好きな人』に届くような、最高の音を響かせようね。それじゃ、おやすみ」

振り返らずに手を振る先輩の背中に、私は何度も頭を下げた。
夜風に揺れる先輩のシャツの裾が、二度と戻らない片想いの終わりを告げるように、切なく揺れていた。

部屋に戻り、ベッドの上で一人深呼吸をしていると、スマホがブブッと小さく震えた。
画面に表示された名前は『律』。

心臓が跳ね上がり、あわてて通話ボタンをスワイプする。

「……もしもし、律?」
『……おう。出るの早いな。しかもなんだその声、緊張してんのか』

受話器越しに聞こえる律の低い声。
その声を聞いた瞬間、張り詰めていた胸の奥がじんわりと解けていくのを感じた。

「緊張もしてるけど……さっきまで、神崎先輩と話してたの」
『……は? あいつと? 夜こんな時間に何話してんだよ』