あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「あのさ……前に話したよね。俺、ずっと前から白波さんのこと、見てた、って」

心臓が跳ね上がった。

「誰もいない音楽室でさ、白波さんが不器用なソロを吹いていた放課後とか。東郷くんが怪我をして、白波さんが自分まで胸を痛めて悩んでいた時とか……」
「………」
「俺さ……真っ直ぐな白波さんの姿に惹かれてたんだ。いつだって白波さんは自分の気持ちに素直だったじゃん。ダメで潰れそうな時には自分の判断でサボったりさ」

サボるという言葉に、私は恥ずかしさと後ろめたさで、神崎先輩から目を逸らし、先輩からもらったペットボトルに視線を落とした。
蓋を回して開けると、プシュッと炭酸の抜ける爽快な音が響いた。

「それがあったからこそ、今の白波さんがいるでしょ?何も悪いことじゃないと思うよ、俺は。俺には、その勇気が出せなくて、余裕があるフリをするしかなかったから」
「余裕のあるフリって、先輩はいつだって完璧だったじゃないですか」
「ハハハ、完璧なんかじゃないよ。俺だって泣いた日はあるんだから」
「えー?先輩がですか?」

私が驚いて目を丸めると、先輩は「今だから言えることだけどね」と、炭酸を飲みながら笑った。