あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「なぁ、これ見て。コンビニで売ってた」
「え、使い捨てカメラ?」
「そう。使い捨てカメラ。よくない?初めて見たわ、俺」
「私も〜!でもさ、何でそんなの買ったの?写真撮るなら別にスマホでいいじゃん。それに、それって写真撮った後にどう映ってるか確認もできないんでしょ?」

私が言うと、律は「そう」と微笑んだ。

「なんか、それがいいなと思って思わず買っちゃったんだよね。忘れた頃に現像してさ。その頃には、全てが思い出になってるわけじゃん?なんかそういうのよくない?」

律はカメラをローテーブルの上に、コト、と置いた。

「これさ……本当にきつい時しか、撮らないようにしようぜ」
「え?」
「27枚しか撮れないんだって。だから、どうしてもダメになりそうな時にだけ、シャッターを押すんだ。全部使い切った時……俺たち、どうなってんだろうな」

律は立ち上がり、私の部屋の窓を静かに開けた。

生ぬるい、けれどどこか優しい鹿児島の夜風が、カーテンをふわりと揺らす。
暗闇の向こう、錦江湾の重い波の音と、夜の虫の合唱が、私たちの間に心地よい沈黙を作った。

「あ、そうだ、あおば。15日に照国神社で六月灯あるだろ?あれ、一緒に行かない?」
「一緒に行かない?って、毎年一緒に行ってるじゃん。何をあらたまってるのよ」

私が笑いながら言うと、律は「まぁ、確かに?」と言って私の頭をくしゃっと優しく撫でた。
そして、部屋のドアへと向かう。

「じゃあな。スイカ、ちゃんと食えよ」

パタン、とドアが閉まる。
律が去った静かな部屋で、私はテーブルの上の使い捨てカメラをそっと手に取った。
明日が来るの……ちょっと、怖いな。