一歩、また一歩。
二人の影が重ね合わさる。
触れ合うか触れ合わないかギリギリの距離。
律から漂う汗の匂いと、さっき食べた甘いアイスの匂い。
律の吐息が私の前髪を揺らすほど近くまで迫ってきた。
ドクン、ドクンと、自分の心臓の音がうるさいくらい耳元で暴れ出す。
「……動くな」
律の左手がそっと伸びてきて、私の頬に触れた。
律の大きな手のひら。
その温度がじわりと頬から伝わってきて、全身の血が巻き上がるみたいに熱くなる。
「律……近いよ……っ」
逃げ場のない窓際。
律の手のひらに頬を包み込まれたまま、私は見上げるしかできなかった。
律の視線が、私の瞳から、ゆっくりと唇へと落ちていく。
え……。
うそ、嘘でしょ……!?
目を閉じるべきなのか、拒むべきなのか。
頭の中が真っ白になって、心臓が破裂しそうなくらい高鳴る。
律の顔が、ゆっくりと落ちてくる——。
唇が触れ合う寸前、ほんの数ミリの隙間を残して、律の動きが止まった。
息がかかるほどの距離で、律は私の目を見つめつづけていた。
胸を激しく上下させながら、私の体温を確かめるように、愛おしそうに頬を親指でなぞる。
——カシャッ。
「……誰のもんにもなるなよ」
耳元で低く囁かれた、熱い吐息。
近すぎる距離。
重なる影。
赤くなった私の耳も、潤んだ瞳も、触れ合う寸前の二人の唇の距離感も、すべてを閉じ込めるように、至近距離でシャッターの音が鳴り響いた。
「っ……!」
