あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


突然玄関のドアが開いて、少し困ったように眉を寄せる律が立っていた。

「ああ、すまない。暑いのに外で長話をしてしまって」
「い、いえ。律の気持ち、わかってくれて、ありがとうございます!」

生意気な言い方だと思ったけど、律が怪我を乗り越えてサッカーに復帰できたのは、おじさんの理解があったからだ。
こんなお礼の言い方しか出来ないけど、それが私の伝えたかったことだから。

私はおじさんに勢いよく頭を下げて律を見ると、律は少し嬉しそうに口角を上げていた。

二階にある律の部屋に入ると、西日がカーテン越しに柔らかく差し込んでいた。

「ほら、食え」

律が袋から取り出したのは、棒が2本ついて、真ん中で二つに割るタイプのアイスだった。
パキッと二つに割ると、大きい方を私に押し付けてくる。
小さい頃から、律はこうだった。
絶対に、大きい方を私にくれたんだ。
冷たいアイスを口に含みながら、部屋の床に並んで座る。

だけど、律はアイスの袋を握りしめたまま、一口も口をつけようとしなかった。
急に重苦しい沈黙が部屋を支配する。
律の体はガチガチに強ばり、息を殺すようにじっと自分の足元を見つめていた。

「……あのさ」

絞り出すような声だった。
律の指先が、アイスの袋を破けそうなほど強く握りしめられ、白く強張っている。

「お前と神崎先輩が付き合ってるって、すげー噂になってんだけど……」

言葉の端々がかすかに震えている。

「最近、あいつの傘に入って二人で帰ったり、音楽室で二人で居残りしたり……。前と、なんか違うよな。サッカー部の連中もそう言ってたぞ」

いつも自信満々な律が、まるで今にも壊れそうなガラス細工みたいに繊細な眼差しで、私の口元を凝視している。

「本当、なのか……?あいつと、付き合ってるって……?」
「……なんで?」
「なんでって……別に、特に深い意味は……」
「付き合ってないよ」

私が律の言葉を遮って言うと、律の呼吸がピタリと止まった。