あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


ピッチのホイッスルが鳴り響いた瞬間、律の纏う雰囲気がガラリと変わる。
リハビリの不自由さにずっと歯を食いしばっていた、あの時の律の姿はどこにもない。
汗に濡れた前髪をサッとかき上げ、鋭く光る黒い瞳でピッチ全体を瞬時に把握する。

芝生を蹴る脚の速さ、ボールが吸い付くようなしなやかなトラップ。
相手ディフェンダーが二人掛かりで身体を寄せても、律は体幹の強さとしなやかなフェイントでいとも簡単にそれをかわしていく。

……すごい。
なに、あの動き……っ。

呼吸をするのも忘れて、私は律の動きを目で追い続けた。

相手の意図を完全に読み切り、中盤でボールを奪い取ると、律は一気にギアを上げた。
爆発的な推進力で芝生を切り裂き、ゴール前へとなだれ込む。
相手キーパーの重心を見極め、右足を深く踏み込んだ瞬間、しなやかに振られた足から放たれたボールは美しい軌道を描いてゴール右隅の網を揺らした。

ドッと上がるどよめきと歓声。

「キャーッ!東郷くんすごーい!!」
「かっこいいーっ!!」

ネット越しに女子たちの黄色い悲鳴が爆発する。
ゴールを決めた律のもとに、チームメイトたちが駆け寄って頭をくしゃくしゃに撫で回していた。

胸の奥がまたチクチクと痛む。
こんなにたくさんの女子が律に夢中になっている。
私なんて、その大勢の中の一人に過ぎない……。

そう思って視線を落としそうになった、その時だった。