あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


そして、だんだん、私の中で律の存在がとても特別なものに変わっていった。

ただの幼馴染みなんかで終わらせたくない。
私も、律の特別になりたい。
そんな気持ちだけは大きくなっていくのに、言えないもどかしさは、全く成長していなかった。


​なんだか、今日のグラウンドでボールを追う律の姿は、どこか落ち着かない気が散ったような空気が漂っているように感じた。

リハビリを終えて芝生を駆けながらも、律の視線は何度も、何度も私がいる4階の音楽室の窓へと向いてくる。
​その視線に気付くくらい、私も律の姿をずっと目で追っているんだけど。

​「白波さん、今のソロ……すごくよかったよ」

​私のすぐ隣で、神崎先輩がトロンボーンを構えている。

手本として吹き鳴らされる音色は深くあたたかく、夕暮れの音楽室を満たしていく。
先輩の教え方はどこまでも優しく、私の身体の力を自然と抜いてくれた。

そして、噂も流れはじめていた。
神崎先輩と白波さんは付き合っている……と。

パートが違うのに、これだけ近くで練習を続けているんだからそんな噂が流れても仕方ないかもしれないけど……。
どんなに私が否定しても、それを信じる人は少なかった。