律の顔が真っ赤に染まる。
「黙れよ。こいつの音も、弱さも、ダサいところも全部知ってんのは俺なんだよ。……他人に横から口挟まれてたまるか」
律が力任せに引き寄せ、私は律の黒い傘の中へと完全に引っ張り込まれた。
ドンッとぶつかった律の胸。
ドクドクと暴れる律の心臓の音と、走ってきた熱さがダイレクトに伝わってくる。
神崎先輩は引き寄せられた私の姿を静かに見つめると、悔しそうに一度目を閉じ、低く息を吐いた。
「まぁ……今日は引くよ。でも東郷くん、大会まで彼女の隣に一番長くいるのは俺だから。それだけは覚えといて」
先輩は律を鋭い目で見ると、乱暴に踵を返してそのまま歩き出した。
残された雨の坂道で、律は私を手繰り寄せた姿勢のまま、固まっていた。
「……り、律……?」
「……っ!勘違いすんなよ!気取られてんのがムカついたから口挟んだだけだからな。つーか、折りたたみ傘くらい常に持っとけ」
