あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


練習に熱中するあまり、すっかり外は薄暗くなっていた。それどころか、窓の外ではパラパラと音を立てて雨が校舎を叩いている。
だから、夏の天気は好きじゃない。
天気予報なんて、もう予報じゃないんだから。

​「……傘、持ってきてないのに」

​困り果てる私に、神崎先輩が優しく微笑みながら自分の大きめのビニール傘を広げた。

​「俺の傘に入っていきなよ。家まで送るから」
​「え、でも……」
​「濡れて帰りたいわけじゃないでしょ?」

……それは、そう、だけど。
先輩と二人で、しかも相合傘なんて……。

「ほら、早く。一緒に帰ろう」

​品のある仕草で傘へと招き入れられる。
一つの傘の下、肩が触れそうな距離感。
シトラスの爽やかな香りがふわりと漂い、私は緊張でドキドキしながら並んで歩き出した。
​雨の音に包まれながら、校門を出て静かな坂道を下っていく。
しばらく二人無言で歩いてから、先輩が突然口を開いた。

「あのさ……俺、最近ずっと白波のこと考えてるんだよね」
「……え?」

真横の先輩の顔を見上げる。

「気付いたら目で追ってる時もある」
「………」
「パートが一緒だったらよかったのに~って思うし」

ビニール傘に当たるパチパチという雨の音がなければ、きっと私はこの緊張感に耐えきれていなかったと思う。

​「あのさ……白波さん。大会が終わったらさ――」

​神崎先輩がふと足を止め、私を見つめて言葉を区切った、その時。

​バッ、と後ろから強い力で私の左手首が掴まれた。