あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


オーディションを経て「自分だけの音」を見つけた私に、もう迷いはなかった。

泥だらけでもがいて、迷って、遠回りしてきた自分の生き様そのものが音になる。
それは、おじさんが気付かせてくれたものだ。

練習を重ねるたび、思い通りの真っ直ぐな音がトランペットから解き放たれていった。

​それでも……。
九州大会の楽曲で任された、たった数小節のソロパートだけはちょっと違った。
どれだけ表現を掴めていても、一音目を出す瞬間の重圧と緊張で、どうしても息が力み、何度練習をしても音がわずかに固くなってしまうんだ。
他のところは、自分なりの吹きかたを見つけたのに、ソロという重みが、失敗できないプレッシャーになっている。

やっぱり​そこで声をかけてくれたのは、神崎先輩だった。

最近私のことを気にかけてくれるんだけど、なんだかちょっと、先輩を前にすると変に身構えてしまうんだよね……。