あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


「……なぁ、あおば」

スイカを食べる手を止め、律がぽつりと言った。
その視線は、部屋の隅の暗がりに落ちている。

「明日……学校行くの、嫌だな」

心臓が、痛いほど跳ね上がった。
律は前髪の隙間から、少し怯えたような目で私を見ていた。
今の律には、グラウンドで誰もが憧れるエースの面影なんて、どこにもない。
なんだ……。
律だって、途中で帰ったこと、気にしてるんじゃん。

「……うん、そうだね。みんな、どんな顔して私を見るかな。途中でいなくなっちゃってさ。明日、私の席……無くなってたりしたら、どうしよう……」

喉の奥が熱くなって、視界が急激に滲む。
自分がしたことの身勝手さと、取り返しのつかない罪悪感で、頭がおかしくなりそうだった。
サボるなんて、やっぱり最低だ。

「俺もさ、実は今日コーチに呼ばれて言われたんだよ。最近、プレーが自分勝手になってきてる、って。」

律が自嘲気味に、ふっと力なく笑った。

「そんなつもりなかったんだけどさ、他の奴らから見たら、そう見えてたんだろうな」
「………」
「エースだ何だって言われてるけどさ……俺にだってあるんだよ、焦り?ってやつが。それがプレーに出てたんだろうな」

律は、一口スイカを食べて、タネを吐き出した。

「それで、急になんか全部が嫌になって、旧校舎に逃げ込んだら、先客がいたってわけ」
「暑かったからって理由じゃなかったんだね」
「まぁ、暑かったってのもあるんだけどさ……。それ以上に、なんか、ここが、ちょっとキツかったっていうか」

律は、白いTシャツの上から胸元を苦しそうに叩いた。