いつかのまほろば

「変わった人生送ってるんだな」

「変わりすぎてるけどな」

 列車がまた大きく揺れる。すると、窓の外は暗いトンネルから、向こうに海の見える街並みになった。

 大変だったよ、と呟くと、昔のことを次々と思い出して、口から漏れていった。

「年を取るのも、成長するのも遅かったもんだから、友人にはずっとからかわれてた」

 子供の頃の記憶は、目線がいつも自分の背丈よりも高った。竹のように背が伸びていく友達に、いつもふざけて負ぶられていたからだった。

「嫁をもらった頃には、子供の頃の友人はもうみんな死んでたよ」

 友人が美味しそうに飲んでいた酒は、美味しいとは思えなかった。

「結婚した次の日に、その友人の墓参りに一人で行った。結婚して次の日に墓参りなんて、縁起が悪いだろ?」

 墓参りにいって、やっと結婚したよ、と言った日と、友人たちと遊んでいたあの日々は、何もかもが変わっていた。
 墓参りの帰り際、港に止まった外国の船を見て、よく友人と日本の外の話をしたことを思い出しながら帰った。

「自分で言うのもなんだが、妻は健気な人だった。死ぬには、早かった」

永才(えいさい)さんのとなりにいれるように、若作り、頑張らなきゃね』
 それが、自分が年を取るのが遅いと伝えてからの、杼茜(ひぜん)の口癖だった。

 父とも仲が良く、ときには実の息子であるはずの自分も知らないようなことさえあった。明るい人だった。

 杼茜(ひぜん)は、死ぬには早すぎた。
 死に顔は、若作りなんて必要のないくらい、きれいな顔だった。生まれたばかりの子を遺して死んだとは思えないほどに。

「思えばいつも、置いてけぼりだったよ」

 みんな俺を置いていった。子供の時は友人が、結婚したすぐに杼茜(ひぜん)が、日露の時は父が。