放課後、僕の料理が君に完食されるまで。

ーーガラガラ…

静かな家庭科室の引き戸が遠慮がちに開いた。

「あのさ、小松くん…急に呼び出して何?」

スクールバッグを肩にかけた望が現れた。

いつも通りの眠たげで何を考えているのかわからない表情を浮かべていた。

蓮介はゴクリと唾を飲み込むと、調理台の上に置かれた、まだ湯気を立てている巨大な肉の塊を指差した。

「花江…これ、食べてみないか?」

「…はっ?」

望は一瞬、心底不可解そうな顔をしてマンガ肉を見つめた後で蓮介に視線を向けた。

「いや…僕、少食だし…こんなデカいのは無理だわ。

じゃあ、帰るね」

「ーー嘘だ」

背を向けようとした彼の腕を蓮介は思わず掴んでいた。

「嘘だよ…君は、少食なんかじゃない。

…ハナノスケ、だろ?」

その名前を口にした瞬間、望の方がピクリと跳ねた。

ゆっくりと振り返った望の瞳にはさっきまでの気怠さは消え失せており、あからさまな警戒の色が浮かんでいた。