放課後、僕の料理が君に完食されるまで。

バタン…と、重い扉が閉まった。

放課後の家庭科室は、静まり返っている。

夕暮れの西日が使われていないステンレスの調理台を冷たく照らしていた。

蓮介はポツンと、一人でその場に立ち尽くしていた。

フライパンを振るために少し固くなった自分の手のひらに、蓮介は視線を向けた。

「ーー俺は…何のために料理をしていたんだっけ…?」

ドカ盛り料理を作りたいと言う、ただの自己満足だったのだろうか?

だが、そうではなかったはずだ。

あの時にマンガ肉を涙が出るほど美味しそうに作ってくれた笑顔、バケツプリンを前に少年のように目を輝かせた瞬間、自分の嫉妬が混じった激辛麻婆豆腐を汗だくになりながらも“蓮介の味がする”と平らげてくれたあの無防備な信頼が頭の中に次から次へと浮かんでいく。

「ーー違う…!」

蓮介の視界が急激に滲んでいく。

「俺が作りたかったのは、ドカ盛り料理なんかじゃない…!」

静かな家庭科室に、蓮介の嗚咽だけが寂しく響いていた。

「望だ…俺は、あいつが嬉しそうに俺の料理を食う姿が…ただ、見たかっただけなんだ…!」

失って初めて気づいた。

望のいないキッチンは…こんなにも冷たくて、寂しい場所なのだと言うことを。