放課後、僕の料理が君に完食されるまで。

「ーーそっか…」

蓮介はそっぽを向いたまま耳を赤くしている望を見つめた。

(俺たちは、出会うべくして出会ったんだ)

自分の“作りたいけれど、食べられない”と言う悩み、彼の“作りたいけれど、作れないから食べることで応えたい”と言う思いに、蓮介は心の中で呟いた。

「じゃあ、私は邪魔者だから帰るわね。

冷めないうちに早く食べなさい」

晶は満足そうに笑って家庭科室を去っていったのだった。

2人きりになった静かな空間が再び訪れた。

「悪かったな、変な話を聞かせて」

望が気まずそうに、ボソボソと頭をかきながら言った。

「ううん、嬉しかったよ」

「はい?」

「だって…君が俺の料理をいつも1口も残さずに、あんなに綺麗に食べてくれる理由がよくわかったから」

蓮介はとびきりの笑顔で望の前にスプーンと箸を差し出した。

「君が作れないなら…俺が一生、君のために料理を作り続ける。

君はただ、俺の隣で世界で1番美味しそうに食ってくれればいいんだから」

「ーーッ…」

望は一瞬、呆然と蓮介を見つめた後で唇のホクロを微かに動かして、嬉しそうに破顔した。

「おう、絶対に1粒残さず食ってやるよ」

卵焼きを大きくひと口で頬張る望の姿を、蓮介はこれまで以上の愛おしさを込めてファインダーに収めるのだった。