放課後、僕の料理が君に完食されるまで。

「お湯を沸かそうとすれば何故か鍋を焦がして、計量スプーンを持たせれば錬金術を始めて、最終的にキッチンから黒煙をあげるレベルなのよ。

昔、私の誕生日に“喜んで欲しいから”って言って卵焼きを作ってくれたんだけど…それがあまりにも黒焦げの石みたいだったの。

私、それを食べて本気で胃腸薬のお世話になって3日も寝込んだんだから」

「姉ちゃん、もうその話はいいだろ!」

望が両手で顔を覆って絶叫するところを晶はクスクスと笑いながら続けた。

「それ以来、この子は“大好きな誰かに手料理を食べてもらう夢”をすっぱりあきらめたの。

その代わりに“誰かが作ってくれたものを世界一美味しそうに、最後の1粒まで綺麗に残さず食べるプロ”になろうって決めたのよね」

(ーーだから望はあんなにも綺麗に、そして幸せそうに食べるのか…)

蓮介の胸の奥に、温かいものが一気に広がっていった。

彼にとって“食べる”と言う行為は、ただの娯楽やビジネスではない。

壊滅的だった自分自身の不器用さを乗り越えて、作り手に対する最大のリスペクトと感謝の気持ちを伝えるための彼なりの全力の表現だったのだ。