放課後、僕の料理が君に完食されるまで。

「ーーふーっ、食った食った!」

撮影が終わった瞬間、望は“ハナノスケ”からいつもの男子高校生へと戻り、椅子の背もたれに体重を預けた。

「最高のプリンだったわ!」

お腹を擦っているその姿は、さっきまでのプロフェッショナルな雰囲気とは違って、やけに無防備で年相応に見える。

「本当に全部食べちゃったよ…。

2キロだぞ?

気持ち悪くなったりしてない?」

「全然!

甘さが絶妙でカラメルがちょっと苦めだから最後まで飽きずに食える。

ぶっちゃけ、後1キロはいけたわ」

「化け物やんけ…」

蓮介は呆れつつも、口元がにやけてしまうのを止められなかった。

これほど作り手冥利に尽きる言葉が他にあるだろうか?

「なあ、小松くん…じゃなくて、蓮介」

「んっ?」

「これからも撮影をよろしくな。

すげえ楽になったし…何より、こんな美味しいもんを食えてめちゃくちゃ幸せ」

望は唇の端についたクリームを親指でペロリと舐め取って、イタズラっぽく笑った。

その無防備な笑顔と男同士のはずなのに、どこかドキリとするような距離感に蓮介は一瞬だけ言葉をつまらせた。

「お、おう…俺の方こそ、君の胃袋には感謝しかないよ。

次はもっと、ドデカイものを作ってやるからな」

「期待して待ってる、相棒」

夕暮れの家庭科室に、空になった皿が1つだけーーお互いの“足りない部分”を完璧に埋めあわせた2人の甘くて騒がしい放課後は、まだ始まったばかりだ。