放課後、僕の料理が君に完食されるまで。

放課後の家庭科室は、夕暮れのオレンジ色に染まっていた。

ーートントントン…

軽快なリズムが静かに家庭科室内に響いている。

蓮介は慣れた手つきで玉ねぎをみじん切りにしていた。

彼の目の前にあるのは…およそ高校生の調理実習には似つかわしくない巨大な肉の塊があった。

ひき肉と細切れ肉を絶妙な配合でこねて、極太のゴボウを骨に見立てて巻きつけた、総重量1.5キロの骨付きマンガ肉だ。

「ーーよし、成形は完璧だ」

後はオーブンでじっくり焼くだけである。

蓮介はじゅわりと額に滲んだ汗をシャツの袖で拭うと、オーブンの予熱ボタンを押した。

小松蓮介(コマツレンスケ)の趣味は料理だ。

それも、漫画やゲームに出てくるようなロマンあふれる“ドカ盛り系料理”を作ることだ。

「美味しそう!」

「食べてみたい!」

完成した料理をSNSにアップして、見知らぬ誰かからコメントをもらうのが何よりの生きがいだった。

ーーだが、彼には致命的な悩みがあった。

「一口だけ食ったら限界なんだろうな…」

そう、蓮介は自他共に認める超少食であった。

作るのは大好きなのに、自分の胃袋には1人前すらまともに入らないのだ。

いつも残った分はタッパーにつめて持ち帰って家族に無理やり食べさせているのだが…正直なことを言うと、それも限界に近かった。

作りたい…けれど、食べられない。

この限界突破した創作意欲を、思い切りぶつけられる“最高の胃袋”がどこかに落ちていないだろうか?