俺は花崎さんのクラスメイトの高野昴。最近、屋上で花崎さんとよく話すようになった。自ら進んで話しかけに行くのはかなり珍しいパターンだ。
自慢じゃないけど、俺は観察力、観察眼、洞察力が人よりいい。話し相手や一緒にいる相手の些細な言動で相手がどう思っているのか解ってしまう。だから人付き合いが苦手になって、自分の意思で孤独選んだ。それは高校2年になった今でも変わってはいない。変わっていないと思っていたんだ、あの日までは。
花崎さんと屋上で話すようになった日を、俺はよく覚えている。あの日、俺が屋上に行こうと思ったのも天気がいいからだった。
屋上で本を読んでいると、屋上の扉が開く音がして俺は顔をあげた。
黒いフワフワロングヘアに黒いガラス玉のような瞳。クラスメイトの花崎さんがそこにはいた。花崎さんがここに来ているのは知っていた。いつも昼休みになると教室からいなくなっていたし、図書館にいないから。
花崎さんはいつも独りだ。望んで独りでいるというより、どこか淋しそうな感じに俺にはみえた。
話してみると話すのが嫌いってわけじゃないことが解った。俺が問いかければ、ちゃんと返事が来る。本音で話してくれてるのは判るけど、あと1歩踏み込ませない雰囲気を感じていた。
考え方、課題研究のこと、勉強……。俺と花崎さんはたくさんのことを話した。だけど、花崎さんは心を開いてはいない。それはもう、頑ななまでに。なにがそうさせているのか、俺には分からない。
「人は嫌い、信じられないから」
花崎さんがこう言ったとき、俺はなにも言えなかった。なにがあったとか、なにが原因でそう思うようになったとか、聞こうと思えばできた。でも、聞いたらいけないような、そんな気がした。
俺は人が嫌いというより苦手だ。人の言動で本心が解ってしまう俺からすれば、その場限りでうわべだけの言葉など信用に値しない。それを言ってしまえば
「え、なんでわかるの」
「心とか頭の中でも読んだ?普通じゃない」
十中八九こう言われる。
大体、普通ってなんだよって思う。「自分の常識は他人の非常識」って言葉を知らないのか、自分の常識を普通を当たり前のように押し付けるなって思ってしまう。
「普通ってなんだと思う?」
花崎さんにこう聞いたとき、戸惑ったような表情を浮かべた。花崎さんは
「私にとっての普通は、独りでも生きること。例えそれが、人に理解されなくても」
と答えた。花崎さんの言葉に俺は
「そうだね。俺もそう思う」
と同意した。
花崎さんは俺以外の人が見たら、基本的に無表情で感情の起伏がないように見えると思う。俺だって些細な変化を見逃さないようにしているからわかるってだけで。
「私はもう、心が麻痺して痛みも感情もわからない」
花崎さんがこう言ったときに俺は心配になった。
そんなはずない、と。
そう思ってしまうほどの孤独を独りで抱えている。その心を支えているのは精神力だってことは解っていた。花崎さんは精神的に強い。けど、その強さは脆さと紙一重で、いつ折れてしまうか分からないような危うさがあることを花崎さんは解っていない。花崎さんは自分自身が思っているほど強くはない。それを解っているのに、教室での俺は花崎さんに手を差しのべることができないでいる。
俺は、花崎さんがなにか隠していることも知っている。誰にも知られたくない、花崎さんにとって重要ななにか。それが孤独の原因なのも解っていた。
(なにについて隠してるんだろう?)
そう思ったとき、直感的に浮かんだのはなぜか超能力だ。
俺はいろんなジャンルの本を読むし、超能力を題材にした小説も読んだことがある。でもそれは小説の世界でしかない。と俺は思っていた。
だけどもし。もし本当に、そうだとするならば。あれほどの孤独の理由も納得がいく。だったら尚更、独りにしてはいけないと思った。
俺は人が苦手で孤独を選んだと思っていた。けど、花崎さんと話すようになって
(俺だけでも、理解者でいたい)
と思ってしまった。少なくても、俺は理解者になっていると自負する。花崎さんは心を開いてはくれていないけど、それでも構わなかった。
花崎さんと屋上で話すようになってから1ヶ月経ったある日、俺は文芸部の活動が終わり、忘れ物を取りに行った教室でで耳を疑う会話を聞いてしまった。
「次のターゲットはあの女ねぇ」
声の主は天野さんだ。俺と花崎さんのクラスメイトで、クラスに君臨する女王のような存在だ。所謂カースト上位で陸上部の彼氏がいるらしい。
天野さんは気分屋で積極的にいじめを行っていることは知っていた。それも教師の目を盗んで、陰湿ないじめを。
本人は隠れてやっているつもりらしいが、俺にはバレバレだ。何度か父さんにも相談もしたことある。
あの女って誰のことだろう。俺はそれが気になって教室に入らず、そのままスマホのボイスレコーダーを起動した。
「あの女って、花崎さん?」
「そうよぉ。あの女、頭がいいってだけでムカつくもの」
天野さんが取り巻きに言った。
「先生にチクったりしたら、あんた達もハブるからねぇ?」
その屈託のない笑顔を見たとき、俺は背筋がゾッとした。俺はボイスレコーダーを止め、教室に入らずそのまま家に帰った。
自慢じゃないけど、俺は観察力、観察眼、洞察力が人よりいい。話し相手や一緒にいる相手の些細な言動で相手がどう思っているのか解ってしまう。だから人付き合いが苦手になって、自分の意思で孤独選んだ。それは高校2年になった今でも変わってはいない。変わっていないと思っていたんだ、あの日までは。
花崎さんと屋上で話すようになった日を、俺はよく覚えている。あの日、俺が屋上に行こうと思ったのも天気がいいからだった。
屋上で本を読んでいると、屋上の扉が開く音がして俺は顔をあげた。
黒いフワフワロングヘアに黒いガラス玉のような瞳。クラスメイトの花崎さんがそこにはいた。花崎さんがここに来ているのは知っていた。いつも昼休みになると教室からいなくなっていたし、図書館にいないから。
花崎さんはいつも独りだ。望んで独りでいるというより、どこか淋しそうな感じに俺にはみえた。
話してみると話すのが嫌いってわけじゃないことが解った。俺が問いかければ、ちゃんと返事が来る。本音で話してくれてるのは判るけど、あと1歩踏み込ませない雰囲気を感じていた。
考え方、課題研究のこと、勉強……。俺と花崎さんはたくさんのことを話した。だけど、花崎さんは心を開いてはいない。それはもう、頑ななまでに。なにがそうさせているのか、俺には分からない。
「人は嫌い、信じられないから」
花崎さんがこう言ったとき、俺はなにも言えなかった。なにがあったとか、なにが原因でそう思うようになったとか、聞こうと思えばできた。でも、聞いたらいけないような、そんな気がした。
俺は人が嫌いというより苦手だ。人の言動で本心が解ってしまう俺からすれば、その場限りでうわべだけの言葉など信用に値しない。それを言ってしまえば
「え、なんでわかるの」
「心とか頭の中でも読んだ?普通じゃない」
十中八九こう言われる。
大体、普通ってなんだよって思う。「自分の常識は他人の非常識」って言葉を知らないのか、自分の常識を普通を当たり前のように押し付けるなって思ってしまう。
「普通ってなんだと思う?」
花崎さんにこう聞いたとき、戸惑ったような表情を浮かべた。花崎さんは
「私にとっての普通は、独りでも生きること。例えそれが、人に理解されなくても」
と答えた。花崎さんの言葉に俺は
「そうだね。俺もそう思う」
と同意した。
花崎さんは俺以外の人が見たら、基本的に無表情で感情の起伏がないように見えると思う。俺だって些細な変化を見逃さないようにしているからわかるってだけで。
「私はもう、心が麻痺して痛みも感情もわからない」
花崎さんがこう言ったときに俺は心配になった。
そんなはずない、と。
そう思ってしまうほどの孤独を独りで抱えている。その心を支えているのは精神力だってことは解っていた。花崎さんは精神的に強い。けど、その強さは脆さと紙一重で、いつ折れてしまうか分からないような危うさがあることを花崎さんは解っていない。花崎さんは自分自身が思っているほど強くはない。それを解っているのに、教室での俺は花崎さんに手を差しのべることができないでいる。
俺は、花崎さんがなにか隠していることも知っている。誰にも知られたくない、花崎さんにとって重要ななにか。それが孤独の原因なのも解っていた。
(なにについて隠してるんだろう?)
そう思ったとき、直感的に浮かんだのはなぜか超能力だ。
俺はいろんなジャンルの本を読むし、超能力を題材にした小説も読んだことがある。でもそれは小説の世界でしかない。と俺は思っていた。
だけどもし。もし本当に、そうだとするならば。あれほどの孤独の理由も納得がいく。だったら尚更、独りにしてはいけないと思った。
俺は人が苦手で孤独を選んだと思っていた。けど、花崎さんと話すようになって
(俺だけでも、理解者でいたい)
と思ってしまった。少なくても、俺は理解者になっていると自負する。花崎さんは心を開いてはくれていないけど、それでも構わなかった。
花崎さんと屋上で話すようになってから1ヶ月経ったある日、俺は文芸部の活動が終わり、忘れ物を取りに行った教室でで耳を疑う会話を聞いてしまった。
「次のターゲットはあの女ねぇ」
声の主は天野さんだ。俺と花崎さんのクラスメイトで、クラスに君臨する女王のような存在だ。所謂カースト上位で陸上部の彼氏がいるらしい。
天野さんは気分屋で積極的にいじめを行っていることは知っていた。それも教師の目を盗んで、陰湿ないじめを。
本人は隠れてやっているつもりらしいが、俺にはバレバレだ。何度か父さんにも相談もしたことある。
あの女って誰のことだろう。俺はそれが気になって教室に入らず、そのままスマホのボイスレコーダーを起動した。
「あの女って、花崎さん?」
「そうよぉ。あの女、頭がいいってだけでムカつくもの」
天野さんが取り巻きに言った。
「先生にチクったりしたら、あんた達もハブるからねぇ?」
その屈託のない笑顔を見たとき、俺は背筋がゾッとした。俺はボイスレコーダーを止め、教室に入らずそのまま家に帰った。
