こころ

 星蘭高校は進学校であり部活動が盛んな学校である。ただ、部活動は強制ではなく任意という体制を取っている。そのため部活動はしていない人が何人かいる。花崎紗希(さき)もその1人だ。
 学生寮もあるが入寮も強制ではなく任意だったりする。学生寮は男女別のワンルーム型である。エントランスを挟んで男子が東棟、女子が西棟で分かれている。それぞれの棟に行くときやダイニングルーム、共同炊事場に行くときは学生証兼ICカードをかざして入る。ダイニングルームと共同炊事場はエントランスの奥にある。管理人も共同炊事場の隣にある。
 朝食が6時半から8時、夕飯からは18時から22時と決まっている。食べる場所も自室かダイニングルームか選べる。昼食に関しては前日の13時ま30分でに事前申告していれば、学生寮に戻って食べたり、持って行って校舎で食べたりできる。フードバンクと提携しているため自室のミニキッチンか、共同炊事場で自分の昼食を作って持っていくことができる。共同炊事場を使う場合は前日の夕食前までに事前申告している人で寮の管理人も同席する。使う前に検温体調チェックシートへの記入などがある。
 そして校則に関しても
「メイクは華美でなければしても構わない」
「頭髪は金髪等華美でなければ染めても構わない。髪型も華美でなければ自由で構わない」
「制服は改造は違反だが、過度に着崩さなければいい」
 と言った風に自由な部分が多い。制服はブレザースタイルで半袖か長袖か、スカートかスラックスか、カーディガン、セーター、ベストか、リボンかネクタイかから選べる。
 進学校であるが故に勉学には厳しい部分がある。行ったテストの順位は容赦なく発表され、成績下位者には補習も行っている。他には課題研究や資格取得制度があったり、長期休みになると全員参加の補習がある。(成績上位者である者は場合によっては免除されることがある)

ー☆ー

 私はあのあと教室に戻り、いつも通りに授業を受けた。授業終了後、私はそのまま学生寮に向かった。部活動は任意なのをいいことに私はどの部活にも入部していないからだ。
「花崎さん、お帰りなさい。夕飯は何時頃にする?いつも通りの時間?」
「戻りました。いつも通りの時間でお願いします」
 学生寮の管理人である原さんにそう伝え、私は部屋に向かった。私はいつも7時頃に朝食、夕食は19時に自室で食べている。昼食は基本的に共同炊事場で作ったものを持っていって屋上で食べている。
 原さんは、私が入学当初から誰もいない時間帯に共同炊事場で自炊をして作り置きをしているのを知っているからか、最近は
「今日は誰の利用もないからいつでも使っていいわよ。使うときに声をかけてね」
「もし使うなら朝だったら6時半頃から、夕方とか夜だったら17時から20時頃とかだったら空いてるから、使うときに声をかけてね」
等々教えてくれたりする。私は原さんのその好意に甘え、誰もいない時間帯に合わせて共同炊事場を使わせてもらっている。原さんからは時々心の声が聞こえることがある。だけどその内容が
『あの子……。いつも独りだけど大丈夫かしら?』
『朝も夕もちゃんと食べてるみたいだけど……。体調とか大丈夫だといいんだけれど』
 というものだった。原さんは私みたいな人でも平等に心配してくれる。いい人、なんだと思う。
ーー私には、よく分からない。
 その場ではいい人に見えてもその心の内はそうでないことが大半なのはよく知っている。それが例え、「心の声」が優しいものだったり聞こえないとしても、だ。
 私は自室に入り、お風呂に向かった。入浴を済ませ、部屋着に着替えた。机に向かい、夕食の時間まで今日の課題と復習、明日の予習をしようと思った。けれど、私は集中できなかった。
(明日も高野昴は屋上に来るのかしら)
 また話そう。そう言われただけなのに。独りで過ごせる貴重な時間がなくなってしまう。そう思うと、高野昴が屋上に来るかもしれないということが、堪らなく嫌だと思った。
 そんなことを考えてる内に夕食の時間になった。私は自室を出て、ダイニングルームと直結している調理場へ向かった。
「夕食を食事を取りに来ました」
 ダイニングルームに入るときに学生証をかざし、調理場のカウンター越しにそう声をかけた。すると原さんが出てきて、お弁当スタイルの夕食を渡しながら聞いてきた。
「容器は洗って明日の朝食のときに返してね。時間はいつも通りで大丈夫?」
「ありがとうございます、いただきます。いつも通りの時間で大丈夫です」
 私は原さんにそう答えながら夕飯を受け取り、自室に戻った。自室に向かい、夕食を食べながら
(今日は早く寝てしまおう)
と思ったのだった。