私はあの日、教室に行く気にならなかった。
ターゲットにしたいじめが終わってるわけじゃないから。
痛みも感情も麻痺して分からないはずなのに、すり減る感じがするから。
気がつくと屋上に向かっていた。
屋上に着くと念動力で扉を開けた。
私はただぼんやりと空を見上げた。
ここはいい。誰も来ないから。誰も私の心を侵さない。
高野昴と初めて話した日も、穏やかな晴れの日だったなと私は思った。
チャイムの音が聞こえた。
「花崎さん……。やっぱりここに居たんだ」
高野昴の声がした。私はゆっくり視線を向ける。
(どうしてここが判ったのかしら……)
その前に
「鍵がかかってるって思わなかったの?」
「鍵がかかってるって微塵も思わなかった。
それに靴があったから学校に来ているのは判ってた。でも、教室に来ていない。ここにいるんじゃないかって思った。絶対的に独りになれるここに」
私はなにも言えなかった。
「どうしてここに来たの?天野恵のターゲットにされるわよ」
今頃SHRを行っている時間のはず。私が居ない教室で、高野昴も居ないとなれば、私を助けに行ったと思う天野恵のターゲットにされるもは必定だ。
そう言う私に構わず、高野昴は近づいて来た。
(嫌、嫌、いや、イヤ……)
その瞬間、私の抑えていた超能力が暴走した。辺りが白く爆ぜた。
「ーー近づかないで……!来ないでよ……!」
感情的になって声を荒げた。
念動力で衝撃波を産み出し、高野昴を傷つけた。それでも、高野昴は近づくことをやめなかった。
「来ないで……来ないでよ……!」
念話が暴走し高野昴に感情をぶつけていた。
(私は、こんなにも……)
感情があったのか。そう思っていると
「痛みも感情も分からないなんて、言うなよ」
高野昴がそう言う声が聞こえた。
気がつくと高野昴は私の目の前にいた。
私は高野昴をみた。
高野昴は優しく私を抱き締めた。
「大丈夫。もう独りじゃないよ」
私はされるがままだった。
(独りじゃない、か……)
その言葉は私の中にストンと落ちた。
気がつくと、感情の嵐は収まっていた。
「昴……。ありがとう」
私は声をあげて泣きじゃくった。
その様子を昴は驚いた顔でみていた。今までフルネームで呼んでいたから、無理もない。
「花崎さん……。紗希さん」
昴は優しい声で私を呼んだ。
「もう独りじゃない。だから独りで抱え込まないで俺に教えて?俺も抱え込まないで、伝えるから」
昴の言葉に、私は頷いた。
ー☆ー
次の日も私達は屋上に来ていた。
「私……、超能力があるの」
私は昴にそう打ち明けた。
「ーー知ってた」
なんとなく、そんな気はしていたから驚かなかった。昨日は暴走もしているから。
「いつから気がついていたの?」
私の問いに
「屋上で話すようになったあの日から」
根拠があったわけじゃないけどね。と昴は言い続けた。
「紗希さんの雰囲気……。変わったね」
柔らかくなった。と昴は言うけど、自分じゃよく分からない。そう思っていると唐突に昴は言った。
「紗希さんに相談があるんだけど」
相談とはなんだろうと思っていると
「紗希さんをいじめてた証拠が集まったし、行動に起こしたいんだけどいい?」
「それは構わないけど……。具体的になにをするの?」
「前に言っただろ?俺の父さん、弁護士だって」
昴はニヤリと笑って言った。そして続ける。
「確実に潰すために情報提供してくれない?
紗希さんも証拠残してるでしょ?」
診断書とか今までされたことのメモとか。と昴は言った。
(どうしてわかったのかしら……)
あの状態でよくみてるというか。昴だって、私がいじめられているときに動画を撮っていたような。
私は自分で持っている証拠を昴に提示する。
「昴、スマホを貸してもらえる?」
昴はスマホを出し
「いいけど、なにに使うんだ?」
と聞いてきた。私はそれに答えず
「カメラアプリを起動してもらえる?」
昴は訳が分からないという表情のまま、カメラアプリを起動させる。私は画面を確認してから受け取った。
スマホをそっと握りしめ電脳操作で私が目にしたこと、聞いたことを送る。送れたことを確認すると、昴にお礼を言い返した。
「えっ。今のも超能力?」
昴はスマホに入った映像と私を交互にみて言った。
「お役に立てそうかしら」
「十分すぎるぐらいに。ありがとう」
私の言葉に悪い笑みを浮かべながら昴は言った。
ー☆ー
後日。昴が私をターゲットにした悪質ないじめ(と他のいじめ被害者のこともついでに)を相談。佐々木誠校長先生の耳に入った。
佐々木誠校長先生は男性のような名前をしているけど女性で、読書好き。さらにはいじめについても理解がある方のようだった。
主犯格の天野恵には懲役退学が決まった。
天野恵の取り巻きに関しては
「いじめられていたから仕方なくやった」
と供述したようだけど、証拠もなにもなく自主退学処分が決まった。
林鈴先生には、私が叩かれたことに気づいておきながら放置したとして「職務放棄」とさらに「安全配慮義務違反」として懲戒免職処分が決まった。
それを聞いて私は心底安心した。
「これで天野恵の「心の声」を聞かないで済むわ」
「心の声」がどう言うものか知らない昴はキョトンとしている。
「いじめていたとき、本当はずっと「心の声」を聞いていたの。そう言えば、あの時初めて昴の「心の声」を聞いたわね」
(あの感情の嵐がもしかして……)
昴は自身が体験したことを思い出したのだろう。痛みに耐えるような顔をした。
「紗希さん」
改まったように昴は私の方をみて言う。
「これからもよろしく」
私は差しだせれた手を取るべきか悩んだ。接触感応で思考を読んでしまうと思ったからだ。超能力があると明かしていても、不安なのは変わらない。
それが通じたのか、躊躇している私に構わず昴の方から手を取ってくれた。
「こちらこそよろしく」
私は繋がれた手の温もりを確かめてそう言ったのだった。
ターゲットにしたいじめが終わってるわけじゃないから。
痛みも感情も麻痺して分からないはずなのに、すり減る感じがするから。
気がつくと屋上に向かっていた。
屋上に着くと念動力で扉を開けた。
私はただぼんやりと空を見上げた。
ここはいい。誰も来ないから。誰も私の心を侵さない。
高野昴と初めて話した日も、穏やかな晴れの日だったなと私は思った。
チャイムの音が聞こえた。
「花崎さん……。やっぱりここに居たんだ」
高野昴の声がした。私はゆっくり視線を向ける。
(どうしてここが判ったのかしら……)
その前に
「鍵がかかってるって思わなかったの?」
「鍵がかかってるって微塵も思わなかった。
それに靴があったから学校に来ているのは判ってた。でも、教室に来ていない。ここにいるんじゃないかって思った。絶対的に独りになれるここに」
私はなにも言えなかった。
「どうしてここに来たの?天野恵のターゲットにされるわよ」
今頃SHRを行っている時間のはず。私が居ない教室で、高野昴も居ないとなれば、私を助けに行ったと思う天野恵のターゲットにされるもは必定だ。
そう言う私に構わず、高野昴は近づいて来た。
(嫌、嫌、いや、イヤ……)
その瞬間、私の抑えていた超能力が暴走した。辺りが白く爆ぜた。
「ーー近づかないで……!来ないでよ……!」
感情的になって声を荒げた。
念動力で衝撃波を産み出し、高野昴を傷つけた。それでも、高野昴は近づくことをやめなかった。
「来ないで……来ないでよ……!」
念話が暴走し高野昴に感情をぶつけていた。
(私は、こんなにも……)
感情があったのか。そう思っていると
「痛みも感情も分からないなんて、言うなよ」
高野昴がそう言う声が聞こえた。
気がつくと高野昴は私の目の前にいた。
私は高野昴をみた。
高野昴は優しく私を抱き締めた。
「大丈夫。もう独りじゃないよ」
私はされるがままだった。
(独りじゃない、か……)
その言葉は私の中にストンと落ちた。
気がつくと、感情の嵐は収まっていた。
「昴……。ありがとう」
私は声をあげて泣きじゃくった。
その様子を昴は驚いた顔でみていた。今までフルネームで呼んでいたから、無理もない。
「花崎さん……。紗希さん」
昴は優しい声で私を呼んだ。
「もう独りじゃない。だから独りで抱え込まないで俺に教えて?俺も抱え込まないで、伝えるから」
昴の言葉に、私は頷いた。
ー☆ー
次の日も私達は屋上に来ていた。
「私……、超能力があるの」
私は昴にそう打ち明けた。
「ーー知ってた」
なんとなく、そんな気はしていたから驚かなかった。昨日は暴走もしているから。
「いつから気がついていたの?」
私の問いに
「屋上で話すようになったあの日から」
根拠があったわけじゃないけどね。と昴は言い続けた。
「紗希さんの雰囲気……。変わったね」
柔らかくなった。と昴は言うけど、自分じゃよく分からない。そう思っていると唐突に昴は言った。
「紗希さんに相談があるんだけど」
相談とはなんだろうと思っていると
「紗希さんをいじめてた証拠が集まったし、行動に起こしたいんだけどいい?」
「それは構わないけど……。具体的になにをするの?」
「前に言っただろ?俺の父さん、弁護士だって」
昴はニヤリと笑って言った。そして続ける。
「確実に潰すために情報提供してくれない?
紗希さんも証拠残してるでしょ?」
診断書とか今までされたことのメモとか。と昴は言った。
(どうしてわかったのかしら……)
あの状態でよくみてるというか。昴だって、私がいじめられているときに動画を撮っていたような。
私は自分で持っている証拠を昴に提示する。
「昴、スマホを貸してもらえる?」
昴はスマホを出し
「いいけど、なにに使うんだ?」
と聞いてきた。私はそれに答えず
「カメラアプリを起動してもらえる?」
昴は訳が分からないという表情のまま、カメラアプリを起動させる。私は画面を確認してから受け取った。
スマホをそっと握りしめ電脳操作で私が目にしたこと、聞いたことを送る。送れたことを確認すると、昴にお礼を言い返した。
「えっ。今のも超能力?」
昴はスマホに入った映像と私を交互にみて言った。
「お役に立てそうかしら」
「十分すぎるぐらいに。ありがとう」
私の言葉に悪い笑みを浮かべながら昴は言った。
ー☆ー
後日。昴が私をターゲットにした悪質ないじめ(と他のいじめ被害者のこともついでに)を相談。佐々木誠校長先生の耳に入った。
佐々木誠校長先生は男性のような名前をしているけど女性で、読書好き。さらにはいじめについても理解がある方のようだった。
主犯格の天野恵には懲役退学が決まった。
天野恵の取り巻きに関しては
「いじめられていたから仕方なくやった」
と供述したようだけど、証拠もなにもなく自主退学処分が決まった。
林鈴先生には、私が叩かれたことに気づいておきながら放置したとして「職務放棄」とさらに「安全配慮義務違反」として懲戒免職処分が決まった。
それを聞いて私は心底安心した。
「これで天野恵の「心の声」を聞かないで済むわ」
「心の声」がどう言うものか知らない昴はキョトンとしている。
「いじめていたとき、本当はずっと「心の声」を聞いていたの。そう言えば、あの時初めて昴の「心の声」を聞いたわね」
(あの感情の嵐がもしかして……)
昴は自身が体験したことを思い出したのだろう。痛みに耐えるような顔をした。
「紗希さん」
改まったように昴は私の方をみて言う。
「これからもよろしく」
私は差しだせれた手を取るべきか悩んだ。接触感応で思考を読んでしまうと思ったからだ。超能力があると明かしていても、不安なのは変わらない。
それが通じたのか、躊躇している私に構わず昴の方から手を取ってくれた。
「こちらこそよろしく」
私は繋がれた手の温もりを確かめてそう言ったのだった。
