東野宮茜は屈しません! 〜元敵国同士の和平結婚〜

「であるからして、条文第二十三条に基づき……」
「だが、国民の総意を得ねば……」

 議会が開会し、討論が始まる。
 茜達護衛は討論を見つめながら、静かに待機していた。
 すると、どこからとなく感じる視線。思わずそちらを向けば杜人で、なぜだかこちらを見ていたせいで視線がぶつかってしまい、なんだか気まずくなる。

(どうしよう。目が合ってしまったけど、逸らしては失礼になるのでは? でも、議会中に夫婦で見つめ合っているのもおかしな話ですよね)

 茜がドキドキしつつも視線を逸らせずにいると、ちょうど杜人が名指しされて立ち上がる。
 そこでやっと視線が逸らされ、茜は無意識に詰めていた息を「ふぅ」と大きく吐き出した。

(もう、夫と目が合っていただけで緊張するなんて。私、大丈夫かしら)

 ちらっと杜人を見るが、未だに発言しているせいでまた目が合う気配はない。

(発言しているときはまた雰囲気が違いますね。こうして見ると、先程よりもさらに凛々しくて素敵……)

 ハキハキと発言している様は普段の印象とはまた違っていい。杜人ってこんな顔もするのかなんて茜が杜人を見つめていると、「何を見ているんだ?」と隣から声をかけられる。

「別に。何でもありません」
「そうか? ずっと同じところを見ていた気がするが」

 そう言ってくる隣の男は次席の護衛で幼馴染みである一郎太だ。年も一つしか離れておらず、家柄は違えど昔から家族ぐるみの付き合いであったので、茜とは兄妹のような関係だった。

「気のせいでは?」
「ふぅん、そうか。……おや、こちらを見ているのは茜の夫君ではないか?」
「え?」

 言われて視線を向けると、目が合う。
 しかし、今回はなぜかすぐに外方を向かれてしまった。

「随分と鋭い視線だったが、監視でもされているのか?」
「まさか。私が監視される理由がありません」
「ほら、ちゃんと仕事をしているかどうかの確認とか」
「失礼な。こうしてきちんと働いているではありませんか。杜人様は一郎太と違ってそんな狭小な方ではありません」
「お前達、煩いぞ。仕事に集中しろ」
「「すみません」」

 茜と一郎太が小競り合いをしていると、司から厳しい声が飛んでくる。
 議会中に私語をしているだけでもよろしくないのに、さらに注意までされてしまって、茜は居た堪れない気持ちになりながら、護衛の仕事を静かに全うするのだった。