東野宮茜は屈しません! 〜元敵国同士の和平結婚〜



「全然会われへん」

 考えすぎて眠れず、結局結論が出ないまま日が昇り始めてしまって杜人は頭を抱える。
 というのも、茜への恋心に気づいた日から茜と全然会えなくなってしまったからだ。
 かれこれ自覚した日からもう十日。あの日喧嘩してしまったこともあって、喧嘩の翌日に謝罪をするも、「あ。私が悪いのです。なので、謝らないでください」と茜から表情一つ変えずに言われてしまった。しかも、その後から今までほぼ会えず。食事の時間もあれこれ理由をつけられて外される徹底ぶりだ。
 一応、会えば一言二言会話はできるものの心ここにあらずといった状態で、祝言を挙げてから少ない時間しか一緒にいなかったとはいえ普段と様子が違うのは明らかだった。

「どうすればええんや」

 謝罪はした。デェトにも誘ってみた。贈り物もしてみた。
 けれど、茜からの反応が何もない。
 まだ会ったばかりの頃のほうがよく喋って表情を変えていた気がする。

(このままだと埒があかん。ここで燻っておっても無駄に時間を過ごすだけや。これは直接本人のところへ行くしかない)

 杜人はそう決めると、すぐに茜の部屋へと向かった。



「茜様、どうなさるつもりです?」

 茜が起きて早々、福が茜の身支度をしながら問いかける。

「どうって言われましても……」
「服や宝飾品、花束に書籍とこんなにたくさん頂き物をちょうだいしたりデェトに誘われたりしているのに一向にお礼のご挨拶をなさらないではありませんか。不義理なことはお嫌いな茜様がそんな態度をとるのはお側付きとして納得できかねます」
「わかっていますが、私もどうすればいいのか……」

 杜人の本音を聞いて以来、茜は杜人と距離をとっていた。基本的に食事の時間をずらしさえすれば、起床時間も出退勤の時間も違うので会うことはない。
 それでどうにかやり過ごしていたのだが、なぜか杜人から接触を試みられることが多かった。
 部屋いっぱいになるほどの贈答品、観劇や食事などのデェトのお誘い、部屋の前での待ち伏せなど、今までにない積極的に行動する姿勢に茜は困惑した。
 お礼を言いたい気持ちはあれど、杜人にどう思われているかわからない。嫌われているかもしれない。疎まれているかもしれない。
 そう思うと、どうしても怖くて会える気がしなかった。

「でも、このままでいいとは思っていませんよね? ……茜様が不安になる気持ちはわかりますが、このように杜人様がされるということは茜様を悪くは思っていない証左だと思いますよ」
「そんなのわからないではありませんかっ。あの方は取り繕うのが上手で本心を隠していらっしゃる。嫌々ながらも義務感で贈答品やデェトのお誘いをしてくださっているのかも」
「それこそありえませんよ。わざわざ嫌な相手にそんな手間をかけるわけがありません」
「ちょーっと失礼するで」
「っ!? 杜人様!?」

 福との会話に割り込むように、部屋の中に入ってきた杜人に驚愕する。
 思わず「杜人様は朝が弱いのでは!?」と声を上げると、「こうでもしないと茜さんに会えへんやろ」と言われてしまい、言い返せなくて口を噤む。

「話がしたい。あかんか?」
「……では、私は席を外させていただきます」
「ちょっ、福! 待ってくださいっ!」

 福が空気読んで出ていくのを茜は引き留めようとするも、福はそのまま出て行ってしまう。
 残された茜と杜人。茜がこの状況をどうしようかと逡巡している間に、杜人は茜の前に向かい合うように座った。