「旦那様、もうお昼ですよ」
昼の時間になっても起きてこない旦那様の寝室の扉を開け彼を起こす。
「昨日は呑んだからまだ寝る」
「もう、朝食下げますよ」
するとガバっと彼は起き上がり「食べる」
と言い切るとカッカッと箸で米をかき込み本当に一粒も米を残さず朝食を食べ切った。
良い食べっぷりだ。
作り甲斐がある。
朝食の片付けや、昨日はしっかり見る事が出来なかった神社を掃除しながら見てみるといろんな事に気がつく。
祟り神が住む神社はさぞかし恐ろしいものだと思っていたがそれは思い違いだったらしい。
広い神社ではないが鳥居や手水、石畳み一つ一つが綺麗で、まわりにはしっかりとした木々が生えている。
ここに祀られているのは祟り神。
それを忘れさせてしまうほどここは洗練された空気を感じる場所だ。
神社の裏に回ってみる。
するとそこで『ある物』を見つけた。
それは小さな畑だった。今は使われていないのか草が伸び放題になっていた。
「旦那様、お願いがありまして
裏に畑を使っいたいのですがよろしいでしょうか?」
旦那様に許可を取りにいく。
「かまわんが。食料なら供物や式神が町で調達するから困っとらんぞ」
式神を使う事ができるなんて
(やっぱり、彼は神様なんだ)
と偉大さに感心した。
「じつは果物を育てたいのです」
「分かった。好きにしてくれていいぞ」
早速、許可をもらうと式神さんに手伝ってもらい草を抜き、耕し畑の脇に種を撒く。
家から持ってきた桃の種だ。
少しでも家の思い出を持って行きたいと思い嫁ぐ前、形だけの意味で持たされた嫁入り道具とは別にして持ってきたのだ。
まあ、育つのに3年かかるけど。
(お姉ちゃん達は大丈夫かな?)
そう思うと胸がキュッと苦しくなる。
しばらく、その場所から離れる事が出来なかった。


