脇役巫女の契約結婚

「百貨店、ですか」

 藤野屋百貨店に行かないかと誘われて、美弥子は驚いた。
 どういう風の吹き回しだろうか。

「別に……俺は妻にそれなりの衣服も与えてやらないほど、甲斐性なしの夫ではないからな」
「もしや、私の身なりは天岸家にふさわしくないものでしたか?」
「違う。ただ、あまり服を持っていないようだから少し気になっただけだ」
「それは要さんも一緒にお買い物へ、ということで……」
「ああ」

 今日の要は言いたいことを我慢しているかのように、なんだか歯切れが悪い。
 
(それでしたら、清子さんかみえさんに頼めば良いのでは……?)

 夫婦としての関わりは求めないと言っていたはずの張本人が、わざわざ休日に一緒に出かける用事を作るだろうか。
 要の内心が分からず美弥子は首を傾げるばかり。

「……なんだ。嫌なら別にいい。金だけ渡しておくから、好きに使え」
「いっ、いえ! 喜んでお付き合いさせていただきます!」

 このままだと要が話を終わらせてしまいそうだったので、慌てて了承する。

(夫婦らしく振る舞うことも、契約上は必要ということかしら……?)

 あまりに淡白な結婚生活を送っていると、周りから咎められ、儀式の準備に滞りが出るかもしれないのだろう。きっとそうだと美弥子は思い込むことにした。