突然の声に、皆が一斉に振り返る。
見ると、神祇官ではなく軍服にサーベルを携えた青年がこちらへ歩いてきていた。
「まあ、天岸大尉よ!」
誰かが黄色い声をあげる。
彼はなぜか、美弥子と芹奈の方へ近づいてきた。
「初めまして、陸軍特務陰陽部隊隊長天岸要と申します。ここに、桐島美弥子さんという方がいると聞いたのですが」
「え……? み、美弥子は私です」
特務陰陽部隊は、陰陽術を用いこの国を襲う穢れを祓い悪霊を調伏する国防を担う存在だ。
巫女が癒しの力なら、反対に陰陽部隊は祓いの力を用いて戦う。
穢れに触れたり呪殺事件にも関わったりするため激務が続けば肉体にも影響が出るため、陰陽部隊を巫女の力で浄化することもある。
彰も部隊の隊員であり、浄化の際に芹奈と出会ったのだとか。そして万年下っ端の美弥子は呼ばれることは一切ない。
ではなぜ、そんな立派な組織の隊長が、なぜ美弥子のような下っ端巫女を探しているのか。
「どうして大尉殿が美弥子を探しているんですか!? まさか、この子が何かしてしまったの!?」
甲高い声で割り込んできたのはもちろん芹奈だ。
「誤解ですわ! 美弥子は確かに力の弱い巫女ですが、悪事を働くような子でありません! それに、美弥子のお家は今はほとんど国と関係ない事業を手がけているような状態です。軍の聴取を受けなければならないようなことなんて……!」
途端に周囲がざわつく。
それではまるで、美弥子が捕まるかのような言い方ではないか。
「やだ、ついに犯罪者になったってわけ? 男遊びばかりしていると聞いたけれどここまで酷いなんて」
「いいじゃない、これであの鬱陶しい顔を見なくて済むようになるわよ」
酷い言い様だ。
だが、要は芹奈の訴えを笑って流す。
「ええ、知っています。誤解させてしまったようですね、私は聴取のために来たわけではありません。そういう貴女は、篠崎芹奈さんではありませんか? 私の部下がそれはもう大変お世話になっているそうで。話はよく伺っていますよ」
「まあ! 本当ですか! 嬉しいですわ、彰さんが私のことを大尉殿に紹介してくださっていたなんて!」
「道理にもとる恋はやめろと再三諭したのですがね。恋は盲目というのは本当のようだ」
「……え?」
今、要はなんと言っただろうか。
困惑する芹奈に目もくれず、要は美弥子の前にひざまづいて手を差し伸べる。
「お嬢さん、どうか私と結婚してくれませんか」
美しい微笑みと共に差し出された手を美弥子はおそるおそる取る。
芹奈ではなく、私を。
周囲も予想外の出来事にざわめき驚いている。
こんな自分が誰かに必要としてもらえる日が来るなんて、夢にも思わなかった。
たとえ騙されているのだとしても、構わないと思えるほどには、芹奈ではなく自分を求めて貰えたことが美弥子には何よりも嬉しかった。
この結婚がただの契約であると判明しても、それは変わらなかった。
見ると、神祇官ではなく軍服にサーベルを携えた青年がこちらへ歩いてきていた。
「まあ、天岸大尉よ!」
誰かが黄色い声をあげる。
彼はなぜか、美弥子と芹奈の方へ近づいてきた。
「初めまして、陸軍特務陰陽部隊隊長天岸要と申します。ここに、桐島美弥子さんという方がいると聞いたのですが」
「え……? み、美弥子は私です」
特務陰陽部隊は、陰陽術を用いこの国を襲う穢れを祓い悪霊を調伏する国防を担う存在だ。
巫女が癒しの力なら、反対に陰陽部隊は祓いの力を用いて戦う。
穢れに触れたり呪殺事件にも関わったりするため激務が続けば肉体にも影響が出るため、陰陽部隊を巫女の力で浄化することもある。
彰も部隊の隊員であり、浄化の際に芹奈と出会ったのだとか。そして万年下っ端の美弥子は呼ばれることは一切ない。
ではなぜ、そんな立派な組織の隊長が、なぜ美弥子のような下っ端巫女を探しているのか。
「どうして大尉殿が美弥子を探しているんですか!? まさか、この子が何かしてしまったの!?」
甲高い声で割り込んできたのはもちろん芹奈だ。
「誤解ですわ! 美弥子は確かに力の弱い巫女ですが、悪事を働くような子でありません! それに、美弥子のお家は今はほとんど国と関係ない事業を手がけているような状態です。軍の聴取を受けなければならないようなことなんて……!」
途端に周囲がざわつく。
それではまるで、美弥子が捕まるかのような言い方ではないか。
「やだ、ついに犯罪者になったってわけ? 男遊びばかりしていると聞いたけれどここまで酷いなんて」
「いいじゃない、これであの鬱陶しい顔を見なくて済むようになるわよ」
酷い言い様だ。
だが、要は芹奈の訴えを笑って流す。
「ええ、知っています。誤解させてしまったようですね、私は聴取のために来たわけではありません。そういう貴女は、篠崎芹奈さんではありませんか? 私の部下がそれはもう大変お世話になっているそうで。話はよく伺っていますよ」
「まあ! 本当ですか! 嬉しいですわ、彰さんが私のことを大尉殿に紹介してくださっていたなんて!」
「道理にもとる恋はやめろと再三諭したのですがね。恋は盲目というのは本当のようだ」
「……え?」
今、要はなんと言っただろうか。
困惑する芹奈に目もくれず、要は美弥子の前にひざまづいて手を差し伸べる。
「お嬢さん、どうか私と結婚してくれませんか」
美しい微笑みと共に差し出された手を美弥子はおそるおそる取る。
芹奈ではなく、私を。
周囲も予想外の出来事にざわめき驚いている。
こんな自分が誰かに必要としてもらえる日が来るなんて、夢にも思わなかった。
たとえ騙されているのだとしても、構わないと思えるほどには、芹奈ではなく自分を求めて貰えたことが美弥子には何よりも嬉しかった。
この結婚がただの契約であると判明しても、それは変わらなかった。

