脇役巫女の契約結婚

 一向に梅雨はあけないまま、ついに明日、儀式の日が訪れる。

(早く、ここを出ていく支度をしないと。でないと、天岸家がまるで自分の居場所のように錯覚してしまうもの)

 要が帰宅次第、引越しについて色々と相談するつもりでいた。
 このところ、要は重要な事件を追っていると聞いている。
 浄化の手助けは常に行っているものの、それで要の仕事そのものが無くなるわけではない。

(天岸家に来てから私の力が強くなったのは、芹奈ちゃんから教わった方法をやめたから? それとも、要さんを想う心があったから?)

 いつだったか、芹奈から聞いた話がある。

 巫女の力は、慈愛の心により為されるものだと。
 強引な政略結婚で美弥子を産み心を病んだ母は、慈愛の心を失った。
 だから、巫女の力を失ってしまったのだと、大人たちが噂していたと。

 美弥子の母は、いつか美弥子が自分よりも強い巫女になることを切望していたらしい。

(こんなこと、考えたって無駄ね。私はもう巫女には戻らないもの……)

 ぼんやりと考える美弥子の視界に、ふと人影が映る。
 窓の外から、要ではない足音が近づいていた。