啖呵を切るように宣言して、私は教室を飛び出した。
あれだけはっきり言ったんだから、沢田くんにも私の思いは伝わったはずだ。
あとは沢田くんが来ることを祈るだけ……。
走りながら溢れてくる涙をこする。すると、突然目の前に壁が現れた。
「⁉︎」
どすん、とぶつかり、尻餅をつく。
「ん?」
壁が振り向いた。それはなんと小野田くんだった。
「小野田くん……」
「あんたは沢田の──」
小野田くんは眉間に皺を寄せ、凶暴な顔で黙り込む。
沢田の、何よ。心の声が聞こえないんだからそこで止めないでよ。気になるじゃない!
「な、な、泣いているのかっ⁉︎ ま、まさか……」
小野田くんはますます青筋いっぱいの恐ろしい顔で、やっぱり黙り込む。
まさか、何よ。心の声が聞こえないんだから意味深なところで止めないでってばよ!
もう、どいつもこいつも会話が下手か。イライラしちゃう。
「沢田と何かあったのか。いや、何かがあったとしても俺には関係ないけどな⁉︎ ああ、俺には全く関係ないから、事情とか説明するなよ? めんどくせえからな!」
面倒くせえのはお前だよ。聞きたいなら聞きたいってはっきり言えや。
あーこのままじゃ私、性格悪くなりそうだわ。
どうしても聞きたそうにソワソワしている小野田くんを無視していくわけにもいかず、私は彼と一緒に帰りながら事情をかいつまんで説明した。
「なるほどな……。まったく沢田のやつ、何を考えてるんだか」
お前もな。小野田くんの横顔はヤクザの鉄砲玉が体にダイナマイトを巻きつけていよいよ敵の組に突入しようとしているみたいに悲壮で、ただただ怖い。
いつも小野田くんを怖がっている沢田くんの気持ちが初めて分かった。
すると小野田くんが生肉を頬張るライオンのようにニヤリと笑いながら言った。
「よし、こんなことを聞いちまったら、沢田の幼なじみとしてほっとくわけにはいかねえな。沢田のことは、俺に任せろ!」
「ええっ⁉︎」
私はギョッとした。小野田くんに任せるって?
なんか、すっごく嫌な予感がする!
「どうするの、小野田くん?」
「そりゃあもちろん、沢田の首根っこを捕まえて白鳥橋の欄干に縛りつけるんだよ」
私は欄干からロープで首を吊るされて、てるてる坊主みたいにブラーンと揺れている沢田くんを想像してしまった。
「いやああああ! やめて、怖いから!!」
「ハッハッハ! 遠慮すんなって。幼なじみとして当然のことをするだけだ」
そんなの幼なじみのすることじゃないよ!!
当然ってなに? マジで何言ってんのこの人、怖いよーーーっ!!!
どうしよう、明日が沢田くんの命日になっちゃうかもしれない……!
「き、気持ちは嬉しいけど、私は沢田くんが来るって信じてるから……! 小野田くんは無茶しないで大丈夫だよ。ありがとう」
私はぎこちなく笑って牽制した。
すると小野田くんは鼻の頭まで赤くなり、
「……ば、バカやろう! あ、あ、ありがとうとか、余計なことを言ってんじゃねえよ! 俺は、女を泣かすような野郎が気に入らねえからヤキを入れてえだけだからな! 沢田のためを思って、とかそんなんじゃねえからなっ!!」
とやけに嬉しそうに口から泡を飛ばした。
やばい。なんか妙なスイッチが入ってるよ!
「まあ、あいつと俺は幼なじみだからな。仕方ねえな、幼なじみだから」
小野田くんは肉食恐竜みたいな笑みを浮かべてブツブツとつぶやく。
ただ幼なじみって言いたいだけじゃないの?
そんな疑惑が持ち上がってきた、その時だった。
「おう、オメエは薬師寺高の小野田じゃねえかコラア!」
謎のヤンキー集団が突然私たちの前に現れた。
まともな髪型をしている人が一人もいない、着崩した学ランにくわえタバコのいかにもって感じの恐ろしい集団だ。
「女とイチャついて歩いてんじゃねえぞコラア! 俺らに挨拶ねえのかコラア! やんのかコラア! ここで会ったが百年目だコラア!」
「やべえ、前工の奴らだ」
小野田くんが小声で舌打ちをした。どうやら因縁のある他校生のようだ。
「あいつらは俺が引きつけるから、とりあえず今は逃げろ、沢田の……!」
……だから、沢田の何やねん!!
ってツッコミをしている場合じゃない。
「大丈夫⁉︎ 小野田くん!」
「心配するな。沢田のことも、必ず俺がなんとかするから!」
いや、なんとかしなくて結構なんですが!
むしろその件から手を引いてーーっ!!
私の心の叫びを引き裂くように小野田くんは走り出し、不良たちがその後を追いかけ始めた。
遠ざかっていく不良たちの怒号が聞こえる。
「逃げんじゃねえよ小野田コラア!」
ああ、どうしよう。
本当に大丈夫かな、小野田くん⁉︎ いろんな意味で不安だよ!!
沢田くんは行けないって言ってるし、その沢田くんを小野田くんは力ずくで連れていく気だし、その小野田くんを不良が追ってるし……。
いったいどうなっちゃうんだろう、明日の花火まつり。
あれだけはっきり言ったんだから、沢田くんにも私の思いは伝わったはずだ。
あとは沢田くんが来ることを祈るだけ……。
走りながら溢れてくる涙をこする。すると、突然目の前に壁が現れた。
「⁉︎」
どすん、とぶつかり、尻餅をつく。
「ん?」
壁が振り向いた。それはなんと小野田くんだった。
「小野田くん……」
「あんたは沢田の──」
小野田くんは眉間に皺を寄せ、凶暴な顔で黙り込む。
沢田の、何よ。心の声が聞こえないんだからそこで止めないでよ。気になるじゃない!
「な、な、泣いているのかっ⁉︎ ま、まさか……」
小野田くんはますます青筋いっぱいの恐ろしい顔で、やっぱり黙り込む。
まさか、何よ。心の声が聞こえないんだから意味深なところで止めないでってばよ!
もう、どいつもこいつも会話が下手か。イライラしちゃう。
「沢田と何かあったのか。いや、何かがあったとしても俺には関係ないけどな⁉︎ ああ、俺には全く関係ないから、事情とか説明するなよ? めんどくせえからな!」
面倒くせえのはお前だよ。聞きたいなら聞きたいってはっきり言えや。
あーこのままじゃ私、性格悪くなりそうだわ。
どうしても聞きたそうにソワソワしている小野田くんを無視していくわけにもいかず、私は彼と一緒に帰りながら事情をかいつまんで説明した。
「なるほどな……。まったく沢田のやつ、何を考えてるんだか」
お前もな。小野田くんの横顔はヤクザの鉄砲玉が体にダイナマイトを巻きつけていよいよ敵の組に突入しようとしているみたいに悲壮で、ただただ怖い。
いつも小野田くんを怖がっている沢田くんの気持ちが初めて分かった。
すると小野田くんが生肉を頬張るライオンのようにニヤリと笑いながら言った。
「よし、こんなことを聞いちまったら、沢田の幼なじみとしてほっとくわけにはいかねえな。沢田のことは、俺に任せろ!」
「ええっ⁉︎」
私はギョッとした。小野田くんに任せるって?
なんか、すっごく嫌な予感がする!
「どうするの、小野田くん?」
「そりゃあもちろん、沢田の首根っこを捕まえて白鳥橋の欄干に縛りつけるんだよ」
私は欄干からロープで首を吊るされて、てるてる坊主みたいにブラーンと揺れている沢田くんを想像してしまった。
「いやああああ! やめて、怖いから!!」
「ハッハッハ! 遠慮すんなって。幼なじみとして当然のことをするだけだ」
そんなの幼なじみのすることじゃないよ!!
当然ってなに? マジで何言ってんのこの人、怖いよーーーっ!!!
どうしよう、明日が沢田くんの命日になっちゃうかもしれない……!
「き、気持ちは嬉しいけど、私は沢田くんが来るって信じてるから……! 小野田くんは無茶しないで大丈夫だよ。ありがとう」
私はぎこちなく笑って牽制した。
すると小野田くんは鼻の頭まで赤くなり、
「……ば、バカやろう! あ、あ、ありがとうとか、余計なことを言ってんじゃねえよ! 俺は、女を泣かすような野郎が気に入らねえからヤキを入れてえだけだからな! 沢田のためを思って、とかそんなんじゃねえからなっ!!」
とやけに嬉しそうに口から泡を飛ばした。
やばい。なんか妙なスイッチが入ってるよ!
「まあ、あいつと俺は幼なじみだからな。仕方ねえな、幼なじみだから」
小野田くんは肉食恐竜みたいな笑みを浮かべてブツブツとつぶやく。
ただ幼なじみって言いたいだけじゃないの?
そんな疑惑が持ち上がってきた、その時だった。
「おう、オメエは薬師寺高の小野田じゃねえかコラア!」
謎のヤンキー集団が突然私たちの前に現れた。
まともな髪型をしている人が一人もいない、着崩した学ランにくわえタバコのいかにもって感じの恐ろしい集団だ。
「女とイチャついて歩いてんじゃねえぞコラア! 俺らに挨拶ねえのかコラア! やんのかコラア! ここで会ったが百年目だコラア!」
「やべえ、前工の奴らだ」
小野田くんが小声で舌打ちをした。どうやら因縁のある他校生のようだ。
「あいつらは俺が引きつけるから、とりあえず今は逃げろ、沢田の……!」
……だから、沢田の何やねん!!
ってツッコミをしている場合じゃない。
「大丈夫⁉︎ 小野田くん!」
「心配するな。沢田のことも、必ず俺がなんとかするから!」
いや、なんとかしなくて結構なんですが!
むしろその件から手を引いてーーっ!!
私の心の叫びを引き裂くように小野田くんは走り出し、不良たちがその後を追いかけ始めた。
遠ざかっていく不良たちの怒号が聞こえる。
「逃げんじゃねえよ小野田コラア!」
ああ、どうしよう。
本当に大丈夫かな、小野田くん⁉︎ いろんな意味で不安だよ!!
沢田くんは行けないって言ってるし、その沢田くんを小野田くんは力ずくで連れていく気だし、その小野田くんを不良が追ってるし……。
いったいどうなっちゃうんだろう、明日の花火まつり。

