ついに……言っちゃった!
沢田くんに好きだって言っちゃったよ!!
沢田くんの反応が気になりすぎて、じっと沢田くんを見つめちゃう。
セピア色の観覧車に、ただ沈黙が流れた。
「……」
「……」
沢田くんは無言のまま石のように固まっていた。ドキドキしながら反応を見ていたけど、そのまま1分、2分と時間だけが過ぎる。
え。ちょっと待って。反応遅すぎない?
3分すぎてとうとう真下に観覧車のゴールが見えてきた。
「さ、沢田くん?」
まさか……。
私は沢田くんの顔の前でひらひらと手を振ってみた。
返事がない。屍のようだ。_(┐「ε:)_チーン。
ええええええ〜〜〜!!
死んでる。いや、沢田くんが、目を開けたまま気絶してるーーっ!!
「沢田くーん!!」
私は沢田くんの肩を掴んで前後に揺さぶってみた。すると、沢田くんの体がグラリと前に──つまり私の方に倒れてきた。
「きゃっ……」
気がつけば、私の肩に沢田くんが側頭を乗せていた。
スウ、と静かな寝息が聞こえる。
……ああ、そうか。
今日のために沢田くんは5時から起きてくれていたんだもんね。
私のわがままに付き合って、ジェットコースターとかお化け屋敷とか緊張する乗り物ばかり乗っちゃったし、極めつけにこの観覧車で完全に限界突破しちゃったんだ。
「……ありがと、沢田くん」
あと2分。こうして沢田くんと寄り添って終わるのも悪くないか。
私は沢田くんの髪に頬を乗せてみた。
シャンプーのいい匂いがして、すごく幸せな気持ちになる。
ああ……楽しかった。
こうして楽しかった私たちの初デート最後のアトラクションも無事に終了──するはずだったんだけど。
「沢田くん、起きて、沢田くん!!」
終点まできたゴンドラからすぐに降りなきゃいけないのに、沢田くんが爆睡していて私は焦った。
「お客さん、早く降りて!」
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
結局私だけ先に降ろされて、沢田くんはたった一人でもう一周の旅へ。
【はっ……ここはどこだ⁉︎ 佐藤さん⁉︎ 佐藤さんがいない〜〜!!。゚(゚´Д`゚)゚。まさか、すべては俺の夢の中の出来事だったのか!? 佐藤さんとはともそもデートに来ていなかった……だと!? そんなバッドエンディング嫌だよ〜〜!。゚(゚´ω`゚)゚。オロローン!!】
観覧車の中で目が覚めたらしい沢田くんの心の声が上空で響く。
ごめんね、沢田くん。
私は地上で待ってるよ。
クスッと笑いながら夕焼けに染まる観覧車を見上げる。
沢田くんとの再会まで、あと5分。
◇
そんな感じでいろいろあったけど、私と沢田くんは目一杯楽しんだ遊園地を後にして家に帰ることにした。
「楽しかったね、沢田くん」
「……うん【ああ〜〜まさか観覧車で爆睡してしまうとは! 恥ずかしかったな〜!!(>_<)マジで夢オチかと思ったよ】
駅に向かって歩く二つの影が、私たちの前に並んで伸びている。
幸せのロスタイムだ。
【それにしても、いい夢だったな……。佐藤さんが俺のこと大好きだって……:;(∩´﹏`∩);: あああ、ごめんなさい佐藤さん。都合のいい夢を見ちゃってごめんなさい! いくら何でも大好きは言い過ぎだろ……。観覧車で二人きりになったくらいで気絶するような大バカやろうだよ? 佐藤さんだってもうすっかり呆れちゃってるよな、きっと……】
沢田くんは私の告白を自分の夢だと思い込んでいるようだ。
ちょっぴり残念。だけど、告白はまだ沢田くんには刺激が強いみたいだし、これでいいんだと思うことにした。
一日中二人きりでデートできただけでも私は大満足だ。
「また来たいね、遊園地」
「う……【えっ! 佐藤さん、こんなに失態だらけだった俺とまた遊園地に来たいと言ってくれるなんて天使すぎか! ありがたすぎて泣いちゃう。゚(゚´ω`゚)゚。】うん」
沢田くんがそっと私の横顔を見つめる気配がした。
【本当にまた佐藤さんとデートがしたいな……】
きゃああああ!! 嬉しいよ、沢田くん〜〜!!
飛び跳ねて喜びたくなったけど、私は聞こえていないフリをして前を向いていた。
【でも、どうやって誘ったらいいのか分かんない……。佐藤さんが行きたいところならどこでもいいんだけどな】
私も、沢田くんと一緒ならどこでも行きたいよ。
もどかしい気持ちをお互いに言い出せないまま、視線を外したまま、駅に着いた。
「えっと……私こっちなんだけど、沢田くんは?」
「俺も【途中まで一緒】」
きっぷの券売機の前で、二人で横並びになる。
どうしよう。これでバイバイなんて、寂しいな──。
せめて次の約束をしてから帰りたい。
そう思った時、私は券売機の真横の壁にでっかく貼られたポスターの存在に気がついた。
綺麗な夜景に大輪の花火が彩りを添えているポスターだ。
そこには『枇杷島公園花火まつり』という文字が書かれていた。
「花火か……。いいなあ、行ってみたい」
私が何気なく呟いたと同時に、沢田くんが心の中で呟くのが聞こえた。
【いいなあ。俺も行ってみたい(´・ω・`)】
思わず見上げると、沢田くんも私を丸い目で見つめていた。
「あ……」
「ええと……」
不思議な偶然というものは本当に存在する。
もうすぐ夏だったり、駅にデートスポットとしてちょうどいいポスターが貼られていたり、それをたまたま二人で見つけてしまったり。
こういうのを運命と言ってしまっていいのかもしれない。
「沢田くん」
「佐藤さん」
ほらね、タイミングまでバッチリだ。
「一緒に行く?」
「一緒に……【行く〜〜〜ヽ(;▽;)ノ!!】」
ポスターに書かれていた日付は今から約一ヶ月後。
楽しみな予定がまた更新された。

