沢田くんはおしゃべり


「いただきまーす!」

 私はホットドッグを大きな口に入れた。うん、予想通りでしかない味だけど美味しい!

【佐藤さん、もぐもぐしてる。可愛い(*´Д`*)俺もいただきまーす】

 沢田くんが上品にホットドッグを一口かじった後、ストローでコーラを飲む。なにげないシーンでもサマになるなあ、なんて見つめていると。


【ふごっ!!!!((((;゚Д゚)))))))】


 突然沢田くんが目を剥き、ストローから口を離してむせた。

「どうしたの、沢田くん?」
【うわーん。゚(゚´ω`゚)゚。やられたよ、佐藤さん! 気をつけて!!】


 沢田くんは涙目でコーラを指さした。
「これ、タピオカ入ってる……」
「えええっ⁉︎」
 沢田くんが持っているコーラの底には、黒くて見えにくいけど確かにタピオカらしいものが入っていた。言われなければ氷の粒か何かだと思って吸い込んじゃうよ!


【ふっふっふ。びっくりしたかい兄ちゃん。お似合いカップルに俺からの特別サービスだよ!ヽ(*^ω^*)ノ】


 振り向けば、遠くで屋台のおっさんが渋い笑みを浮かべてこちらに親指を突き出していた。


 いらんことしないで、おっさんーーー!!




【まさかコーラを飲んでいていきなりタピオカから攻撃をくらうとはな。ただの木馬だと思って油断してたら中に人が入っててビックリ、みたいなアレに似てる。アレってなんだっけ】

 答えはトロイの木馬だよ。受験生のみんな! テストに出るかもしれないから覚えておいてね。


 それはさておき、私もおそるおそるストローでコーラを飲んでみる。
 コーラタピオカってどんな味なんだろう。ちょっと興味あったけど、私の方には何故か入っていなかったようで、甘い炭酸だけが爽やかに喉を通っていった。
 半分ホッとして、半分残念のような。


「沢田くん、私の方は大丈夫だったよ」
「えっ【なんで俺のだけ。゚(゚´ω`゚)゚。】」
「あのお店の人が間違えちゃったのかもね。どうする? 一口飲んじゃったけど、私のと交換する?」

 ただのコーラが入った紙コップを少し持ち上げると、沢田くんの目がキラキラと輝きだした。


「……いいの?【佐藤さん、優しい……(*´Д`*) まさに天使。天使以外の何者でもない!】」
 また、いつも大袈裟だなあと思いながら私は笑った。


「うん、いいよ。タピオカ入りのコーラ私も飲んでみたかったから」
「じゃあ……ありがと【いただきます!!】」


 沢田くんの手が私の紙コップを持ち上げる。
 あ、でもストローは口つけちゃったから返してね──と言おうとした時だった。
 沢田くんがとても自然に、私のストローに口をつけてしまった。


 ああああああああああ!! それってもしかして間接キスじゃ……!


【美味しい(*´꒳`*)】
 沢田くん、気づいてない。
 どうしよう、どうしよう⁉︎


 私の手には沢田くんが口をつけたストローのささった、タピオカ入りコーラの紙コップ。私も知らん顔して飲んでしまう⁉︎

 ドキドキしながら、ゆっくりゆっくりとストローに唇を近づける。
 き、気にしない、気にしない!
 たかが沢田くんの唇がついたものに唇で触れるだけじゃない!
 直接触れるわけでもないんだから、そんなこといちいち考えない!

 い、いくよっ!

 私は思い切ってストローをくわえようとした。
 ……。
 …………。
 ………………ああ、尊すぎてやっぱり無理!


 私はストローを抜いて、コップの縁から一気にごくごくコーラを飲んだ。
 沢田くんは私の行動にびっくりしたのか、ストローを口から外してポカンとする。


【ど、どうしたの、佐藤さん⁉︎ ((((;゚Д゚))))))) そんな飲み方したらタピオカが喉に詰まっちゃうかもしれないのに⁉︎ あっ、もしかしてタピオカの食感と炭酸を同時に喉で楽しむためにあえて一気飲みしてるの⁉︎ なんてストイックで男らしい飲み方なんだ、佐藤さん! さすがタピオカ好きはこだわりが違う……!】


 タピオカ、そんなに好きでもないんだけどな。
 っていうか食いしん坊キャラがどんどん定着していくようで怖いわ(泣)