沢田くんはおしゃべり



 それから私たちはいくつかのアトラクションに乗った。
 高速で回転する空中ブランコのようなものに乗ってみたり、ティーカップ型の乗り物でグルグル回転してみたり、遊覧船で人工池を一周してみたり。気づけばなんだか回ってばかりいた。

【楽しい……。゚(゚´ω`゚)゚。 遊園地、楽しいよーっ。゚(゚´ω`゚)゚。】

 沢田くんの表情は何に乗ってもあんまり動かなかったけど、心の中は無垢な少年のように心から純粋に楽しんでいるようだった。
 やっぱり遊園地にしてよかった。沢田くんが楽しそうだし、私も正直こんなに楽しい遊園地は生まれて初めてだった。
 疲れも忘れて遊んじゃう。

「ねえ、次はどこへ行く?」
 元気よく沢田くんに話しかけた時だった。

 ぐう。
 と、沢田くんの方から謎の音がした。


【しまった……! お腹が鳴っちゃった……!((((;゚Д゚)))))))】

 
 沢田くんは無表情で焦り出す。
 そういえば、アトラクションに夢中でお昼ごはんを食べるのをすっかり忘れていた。時計の針はとっくに12時を過ぎている。それどころか、もうじき午後2時になろうかという時間だ。沢田くんのお腹も空くはずだよね。


【ど、どうしよう。今の音ははっきり聞こえちゃったよな! とりあえず咳払いでごまかそう!】「ごほっ、ゴフォ」【ああ、咳払いなんて俺今までしたことないから正しい咳払いの仕方が分かんない。゚(゚´ω`゚)゚。助けて、ア○クサ! 正しい咳払いの方法教えて! いやそれより腹の音のごまかし方だろ】


 だめだ、これは笑ってしまう! 草不可避!
「ぷくくく……」
 笑いを押し殺したら変な笑い声出た。助けてア○クサ!


【はっ∑(゚Д゚) 佐藤さんが笑ってる……⁉︎ 俺の腹の音に気づいたか⁉︎】


 ヤバい、沢田くんが怪しんでいる。私も咳払いでごまかそう。
「げふん、げふん」
 待って。咳払い下手すぎか。
 

【佐藤さん、今のは咳払い……なのか? え。待って。なに今の可愛い。これが正しい咳払いか! 学習した】


 しちゃだめ! 恥ずかしい!!


「沢田くん、ごめん! 私、お腹空いちゃった。次のアトラクションに行く前にどこかで何か食べない? あ、あんなところにホットドッグのお店が!」


 私はちょうど近くにあった移動販売のワゴンを見つけて指を差した。
「あそこでいい?」 
「うん【佐藤さんもお腹空いてたのか。それでごまかして咳払いしてたのかな? 俺たちって本当に気が合う(*´Д`*)】


 お願い、さっきの咳払いのことは忘れて!
 恥ずかしさをごまかすため、私はダッシュでワゴンに近づいた。

 
【佐藤さん、走って買いに行くなんて! よっぽどお腹が空いているんだな。ワゴンめがけてダッシュする佐藤さん、可愛いよ佐藤さん(*´Д`*)】


 結果、余計恥ずかしくなった。
 完全に食いしん坊キャラの属性がついたよねこれ。



 屋台で売られているホットドッグって、どうしてこんなに美味しそうなんだろう。縦長に切った細長いバンズの間に千切りキャベツとアツアツのでっかいソーセージがドーンと挟まれて、上にマスタードとケチャップが乗っているだけなのに。

「ホットドッグ二つください!」
「はいよー」【おっ。高校生カップルか。いいねえ青春してるねえ】

 屋台のおっさん(推定年齢45歳)はおじさんくさいことを心の中で呟いて笑っている。なんだか照れちゃう。

「あ、沢田くん。飲み物もあるよ。どうする?」
【俺はコーラ一択で……ん? よく見るとすごい品揃えだ!】

 沢田くんがメニューボードに書かれたソフトドリンクの種類に目を留めた。

【普通、こういう屋台ってオレンジかコーラか烏龍茶かアイスコーヒーぐらいなのに、マジか。生搾りバナナジュースにメロンソーダにタピオカミルクティーにスムージー各種だと……⁉︎ ホットドッグは一種類なのに! どっちがメインなんだよこの店】

 沢田くんの言う通り、メニューボードには溢れるほどの種類豊富なソフトドリンクがあれもこれもとぎっしり書き込まれていた。

【ふっふっふ。気づいたな、兄ちゃん。うちの店の豊富な品揃えに衝撃を受けているな? ホットドッグは一種類なのにとか思っているだろう。だからこそさ! ホットドッグ一個じゃ勝負できないから飲み物で客を釣っているのさ! さあ、買っていけえええええ!!!】

 屋台のおっさん、獲物を見つけたハンターみたいな目をして沢田くんを見ているよ! どうする? 沢田くん!

「じゃあコーラで」

 沢田くんは結局コーラ一択でブレなかった!!
【ズコー_(┐「ε:)_】
 おっさんはやや凹み。可哀想だから私はタピオカミルクティーにしよう。

「じゃあ私はタピオカ……」
「あーすいません。今、タピオカ切らしてるんで原産地までスタッフが取りに行ってるんですよ〜」
「じゃあコーラで」
「はーい」【おいおいおいおい! 今のは冗談だよ、お姉ちゃん〜。゚(゚´Д`゚)゚。 こんなにいろいろあるのになぜ君たちはコーラ一択⁉︎ ふっ。負けたぜ、このお似合いカップルめ!!】

 めんどくさいおっさんからはさっさと逃げるに限る。
 ホットドッグとコーラをそれぞれもらって、私たちは近くのベンチに移動した。