……ついにこの日が来てしまった。
沢田くんと遊園地!
昨日の夜はドキドキしすぎてなかなか眠れなくて焦った。目の下にクマなんてできて欲しくない。
日曜日の朝、結局6時半に起きた私は、さっそく鏡の前で顔色をチェックしたり、ギリギリまで悩んだカットソーとミモレ丈のスカートに着替えたり、ヘアアイロンで短い毛先を巻いたりと大忙しだった。
デートなんて初めて。しかも相手はあの沢田くん。
いつもよりしっかりオシャレして沢田くんをびっくりさせたかった。
場所は私が乗りたいと思ったアトラクションを全て兼ねそろえている県内最大の遊園地にした。
集合時間は開園と合わせて、現地で落ち合うことになっている。
沢田くんの私服を見るのも初めてだな。パジャマは見たことあるけど。
あー緊張してきた!
「気合い入ってるな。どうしたんだ、景子は」
「男の子とデートするんだって」
「デート⁉︎ ぶはっ!」
「ちょっとお父さん、味噌汁噴かないでよ」
リビングでは朝食中の両親がそんな会話をしている。
こういうのってちょっと気まずいなあ。早めに準備して、早めに行って、早めに沢田くんを待ってよう!
私はごはんもそこそこに済ませて家を出た。歩き回ることを想定して、通学用のローファーではなくてスニーカーを履いていく。
天気は予報通りの快晴だった。ちょっと汗ばむくらいの陽気だ。
念の為、良い香りのするミストをつけて準備はオッケー。
電車と駅からの直行バスを乗り継ぎ、私はようやく遊園地に到着した。
時間は待ち合わせの15分前というところ。いろいろやってたらけっこうあっという間にいい時間になっていたけど、沢田くんはまだ来ていないかな?
【佐藤さん、まだかな……】
来てた。
遠くからでもパッと目を引く艶やかな黒髪と、透明感のある白い肌。それを引き立てるような7分丈の白シャツと細い黒デニムを履いている……私服姿の沢田くん!!!
やばい、血を吐きそうなほどカッコ良いんですが!!
【もしかして、ドッキリだったらどうしよう((((;゚Д゚)))))))緊張しすぎて朝5時に目が覚めたんだけど、もしかしてまだ夢の中だったらどうしよう! 知らず知らずのうちに二度寝することってあるよね。佐藤さんを待たせるわけにはいかないと思って1時間前から待っている俺っていう夢……悪夢じゃん!!((((;゚Д゚)))))))夢なら早く覚めろーーーっ!!!】
ええええっ、1時間も前から待ってたの⁉︎
私は慌てて沢田くんの前に小走りで近づいた。
「沢田くんっ」
【ドキッ!!!Σ(゚д゚lll)】
無表情に驚く沢田くん。顔面固まったままで、私を見つめて、
【さ、佐藤さん……来てくれた!!。゚(゚´Д`゚)゚。ええっ、めっちゃ可愛い! めっちゃ可愛いよ〜〜〜!!! ああ、これが夢だったら脳内で作り出した俺、グッジョブ。いや、目覚めろや!!!】
いきなりテンションMAXのもよう。可愛すぎてニヤニヤしちゃう。
「ごめん、待った?」
「……今、来たとこ」
しかも嘘ついてるし。
【一度言ってみたかったんだ、このセリフヽ(*^ω^*)ノ】
気持ちは分かるよ、沢田くん! 私も同じさ!!
お互いに早く来てしまったので、その場で開園を待つこと15分。
「あのー。すみませんけど写真撮ってもらえませんかあ?【キャーッ、超イケメン!】」
沢田くんに話しかけてきた女子グループはこれで五人目だ。
話しかけるきっかけとしてスマホを渡し、ついでに連絡先も交換してしまおうという魂胆がまるっと透けて見える。
もちろん私は完全にスルーされている。なんだか沢田くんのぼっちボール奥義『おんみつ』を伝授されたかのようだ。
「……できません【写真を撮るなんて、そんな重大責任負わされるのは無理ですって((((;゚Д゚)))))))!! もし半目の時にシャッター押したらと思うと心臓潰れる!! っていうかなんでみんな俺に話しかけるのーーっ⁉︎ 学校じゃ無視されまくってるのに! 遊園地だからみんなテンションが高いのか⁉︎ 恐るべし、遊園地!】」
まあ、沢田くんがいつもと同じクールな反応をしてくれるおかげで、ヤキモキしないで済むけどね。
「沢田くん、開園したらまず一番人気のジェットコースターに乗っちゃおう! 遅くなってから行くと待ち時間がすごいことになるから」
「う……うん【いきなりジェットコースターかああああ!!! 失神だけはしないように頑張るぞ!】」
「あ、あと……」
「ん?」
急に語尾が小さくなった私を沢田くんが見つめる。それだけでドキーンとしちゃって、私は「なんでもない」とはぐらかした。
言えないよ、私の方から「手を繋いで」なんて。
【どうしたんだろう、佐藤さん。今、何か言いかけたよな。なんだかちょっと顔が赤いような気がする……ハッ、もしかして、俺の歯に青のりでもくっついているのでは──⁉︎ いやいや、今日は青のりがつくようなもの食べてないよ。それにしても恥じらって何も言えない佐藤さん、可愛いな。天使か】
沢田くんのせいで私はますます赤くなってしまったと思う。
まあ、手繋ぎはまだハードル高いよね。焦らずに行こう。

