「きっと冬華にとって良い経験になると思うよ」
新幹線に一人で乗るのは初めての経験。自由席だけれど、隣に人が乗ってくることがないので、ゆっくりと窓の外を眺めながら進んで行く。
週末を利用して、私は大分県に住んでいるひろ子おばちゃんの所に行くことになった。あいつは「ずるい」って何度も何度も言っていたけど……お母さんが「冬休みに行ってきたら」というと、ピタリと大人しくなっていた。
お母さんが言うには、ひろ子おばちゃんはスゴい人らしい。この前本当に久しぶりに家に来てくれた時、もっと話をしたかったのに、あいつが2人でずっとしゃべっていたから。正直羨ましかったけど、あの時は何も言えなかった。
(京都か。良いな、散歩してみたい)
新大阪や京都のアナウンスが車内に響くたびに、旅をしている感覚になって次第にワクワクしている自分に気づく。車内から見える景色は、横浜とまた違った雰囲気。降りて街中を歩きたくなってくる。
(2人きりだとちょっと緊張するな……)
磯子の家に来てもらった前回とは違って、私のまったく知らない場所で2人きり。内心ものスゴく緊張していた。本当は飛行機で行った方が速いけれど、ちょっと怖かったし、せっかく行くなら景色をぼんやり眺めながら行きたかったから、新幹線を選んだ。
(うわあ、海……新幹線で正解だなー……)
瀬戸内のエリアは海が綺麗。景色一面に広がる海は、これまで経験したことがなかった。色々な場所の景色の雄大さに触れていると、自分の人生のことなのに「悩んでいることなんて、小さなことなんじゃないかな」とさえ思えるようになるのが、とても不思議だった。
☆
ひろ子おばちゃんは小倉という駅で待ち合わせることになっていた。新幹線は博多まで延びているけれど、大分に行くには小倉からの方が都合が良いとのことだった。
「冬ちゃーん」
改札口から聞こえてきた、ひろ子おばちゃんの声。ちょっと知らない土地で心細くなっていた私の心が、一気にパアっと明るくなった。
「ひろ子おばちゃん! 来ちゃった」
「ははっ! この前振りだねえ。元気してた?」
「元気元気!」
「九州、初めてなんだって?」
「……九州どころか、横浜から出たことなかったよ」
「こっちだよ」と駐車場に向かって歩く、ひろ子おばちゃん。まだ5時間も経っていないのに、本当に久しぶりに人としゃべったような感じになるが、とても不思議。キャリーケースを引きずるように、おばちゃんの後を追う。
「じゃあ、本当に旅! って感じだね、今回は」
「そうそう。新幹線からの景色も最高だったもん」
「でしょう? 私もそうだったもんな。初めての時は」
「そっか。おばちゃん元々横浜に住んでたんだもんね」
「そうよ。もう離れて……どれくらいだろう。25年近いからね。すっかりこっちの人になったよ」
小倉の駅は想像以上に大きくて、たくさんの人で賑わっていた。九州の玄関口として、人口もかなり多いって教えてくれた。
「あまり来ないけどね。小倉は賑わってる場所だよ」
「福岡県?」
「そうそう。博多より北にあるからさ。あまり遊びには来ないけどね」
駐車場に止まっている、薄いピンク色の軽自動車。「狭いけど、どうぞ」と言っておばちゃんはドアを開けてくれた。キャリーケースを後部座席に丁寧に置くと、いよいよ私の短い旅が本格的に始まった――。
新幹線に一人で乗るのは初めての経験。自由席だけれど、隣に人が乗ってくることがないので、ゆっくりと窓の外を眺めながら進んで行く。
週末を利用して、私は大分県に住んでいるひろ子おばちゃんの所に行くことになった。あいつは「ずるい」って何度も何度も言っていたけど……お母さんが「冬休みに行ってきたら」というと、ピタリと大人しくなっていた。
お母さんが言うには、ひろ子おばちゃんはスゴい人らしい。この前本当に久しぶりに家に来てくれた時、もっと話をしたかったのに、あいつが2人でずっとしゃべっていたから。正直羨ましかったけど、あの時は何も言えなかった。
(京都か。良いな、散歩してみたい)
新大阪や京都のアナウンスが車内に響くたびに、旅をしている感覚になって次第にワクワクしている自分に気づく。車内から見える景色は、横浜とまた違った雰囲気。降りて街中を歩きたくなってくる。
(2人きりだとちょっと緊張するな……)
磯子の家に来てもらった前回とは違って、私のまったく知らない場所で2人きり。内心ものスゴく緊張していた。本当は飛行機で行った方が速いけれど、ちょっと怖かったし、せっかく行くなら景色をぼんやり眺めながら行きたかったから、新幹線を選んだ。
(うわあ、海……新幹線で正解だなー……)
瀬戸内のエリアは海が綺麗。景色一面に広がる海は、これまで経験したことがなかった。色々な場所の景色の雄大さに触れていると、自分の人生のことなのに「悩んでいることなんて、小さなことなんじゃないかな」とさえ思えるようになるのが、とても不思議だった。
☆
ひろ子おばちゃんは小倉という駅で待ち合わせることになっていた。新幹線は博多まで延びているけれど、大分に行くには小倉からの方が都合が良いとのことだった。
「冬ちゃーん」
改札口から聞こえてきた、ひろ子おばちゃんの声。ちょっと知らない土地で心細くなっていた私の心が、一気にパアっと明るくなった。
「ひろ子おばちゃん! 来ちゃった」
「ははっ! この前振りだねえ。元気してた?」
「元気元気!」
「九州、初めてなんだって?」
「……九州どころか、横浜から出たことなかったよ」
「こっちだよ」と駐車場に向かって歩く、ひろ子おばちゃん。まだ5時間も経っていないのに、本当に久しぶりに人としゃべったような感じになるが、とても不思議。キャリーケースを引きずるように、おばちゃんの後を追う。
「じゃあ、本当に旅! って感じだね、今回は」
「そうそう。新幹線からの景色も最高だったもん」
「でしょう? 私もそうだったもんな。初めての時は」
「そっか。おばちゃん元々横浜に住んでたんだもんね」
「そうよ。もう離れて……どれくらいだろう。25年近いからね。すっかりこっちの人になったよ」
小倉の駅は想像以上に大きくて、たくさんの人で賑わっていた。九州の玄関口として、人口もかなり多いって教えてくれた。
「あまり来ないけどね。小倉は賑わってる場所だよ」
「福岡県?」
「そうそう。博多より北にあるからさ。あまり遊びには来ないけどね」
駐車場に止まっている、薄いピンク色の軽自動車。「狭いけど、どうぞ」と言っておばちゃんはドアを開けてくれた。キャリーケースを後部座席に丁寧に置くと、いよいよ私の短い旅が本格的に始まった――。



