あれからママの様子を気にして見てるけれど、これといって変なところはなかった。
パートから帰ってきて、ご飯を作ってくれて……アルバイトがない時は、3人で一緒に食べる。
ひろ子おばちゃんと話をしてからというもの、より気になるようになったけれど……重い病気なのかなと、正直ずっと気になっている。
笑って冬華と話をしているママを見ていると、「大丈夫なのかな」と思う時もあるけれど、ひろ子おばちゃんの「私がこんな風にしてるんだから。大丈夫だよ」と言ってくれた顔が、心の落ち着きを取り戻してくれる。
「ねえ。冬華ってさ、どうして看護師になりたいの?」
「はあ? 何よいきなり。……キモ」
一瞬ビックリしたような表情でわたしを見てきたけれど、すぐにテレビに視線を移してご飯を食べ始めた。
「なんか、気になっちゃってさ」
「はあ? お前に言ってもムダ」
「わたしの方が年上なんだけど……いつも言ってるけどさ」
「じゃあ聞かなくて良いじゃん」
冬華が、看護師になりたいと言っていたのは覚えているけれど、いつから言い出したのか覚えていない。
「横浜市立大学って、難しいの?」
「……」
「ねえ。無視しないで教えてよ。ねえってば」
「うるさいな」
不思議だった。せっかくこのエリアで一番レベルの高い高校に合格したっていうのに……入学してから、あまり楽しそうなところを見ていないなと思った。
(学校と家じゃ違うのかな……)
わたしは勉強がずっと苦手だったから、ママに塾に行かせてもらったりしたけれど、考えてみれば、冬華がママに何かをおねだりしているところを、あまり見たことがない。
「まあ、冬華だったらきっと大丈夫でしょ。高校も受かったんだし」
「うるさいな!」
家が壊れるかと思った。冬華の怒鳴る声を聞いたのは初めてだった。まるで別の人のような鋭い声。思わずビクっとしてしまう。
ぎろりとわたしを睨む目の奥に、言いたいことがたくさんあるように感じた。
「……な、なによ。そんなに大きな声出さなくても」
「……」
助けを求めるようにママに視線を送ると、じっと冬華を見続けたまま。左側に少し首をかしげるような感じで。「そんな声出さないの」と怒ってくれれば良いのにと思った。
「お前はバイトしてるだけじゃん!」
「私の気も知らないで、うるさいんだって!」
冬華の肩が大きく揺れている。聞こえないくらいの声で、息を吐き出した。
「は? アルバイトだって大変なんだけど?」
「どうせコンビニなんて立ってるだけじゃんか!」
『わたし』を否定されたような気がして、胸の奥で一気に何かが沸騰したような感覚になった。
「そんなわけないじゃん! あんたもやってみなよ。大変なんだから!」
「あんたなんか……アルバイトもしないで! 少しはママを助けなよ!」
何も考えることなく出てくる言葉。止めることができなかった。言い終わった後に「しまった」と思ったけれど、遅かった。
「……もう、良い」
テーブルに叩きつけるように、バンと箸を置いて自分の部屋へと戻っていってしまった。
「……」
冬華が残した、食べかけのご飯。ギュッと胸を締め付けてくる。
「はあ」
「もうちょっと考えられたんじゃないの?」
「え?」
大きな声を出してしまって、声がかすれているわたしとは対照的に、ママの声は穏やかだった。
「ちょっとデリカシー無かったかもね」
「あなたはそういう所、分かる子だと思ってたけど?」
(……)
「しまったな」と思い、テーブルを見つめることしかできなかった。
シンとなったリビングに、かすかな泣き声が隣の部屋から漏れてきた。
パートから帰ってきて、ご飯を作ってくれて……アルバイトがない時は、3人で一緒に食べる。
ひろ子おばちゃんと話をしてからというもの、より気になるようになったけれど……重い病気なのかなと、正直ずっと気になっている。
笑って冬華と話をしているママを見ていると、「大丈夫なのかな」と思う時もあるけれど、ひろ子おばちゃんの「私がこんな風にしてるんだから。大丈夫だよ」と言ってくれた顔が、心の落ち着きを取り戻してくれる。
「ねえ。冬華ってさ、どうして看護師になりたいの?」
「はあ? 何よいきなり。……キモ」
一瞬ビックリしたような表情でわたしを見てきたけれど、すぐにテレビに視線を移してご飯を食べ始めた。
「なんか、気になっちゃってさ」
「はあ? お前に言ってもムダ」
「わたしの方が年上なんだけど……いつも言ってるけどさ」
「じゃあ聞かなくて良いじゃん」
冬華が、看護師になりたいと言っていたのは覚えているけれど、いつから言い出したのか覚えていない。
「横浜市立大学って、難しいの?」
「……」
「ねえ。無視しないで教えてよ。ねえってば」
「うるさいな」
不思議だった。せっかくこのエリアで一番レベルの高い高校に合格したっていうのに……入学してから、あまり楽しそうなところを見ていないなと思った。
(学校と家じゃ違うのかな……)
わたしは勉強がずっと苦手だったから、ママに塾に行かせてもらったりしたけれど、考えてみれば、冬華がママに何かをおねだりしているところを、あまり見たことがない。
「まあ、冬華だったらきっと大丈夫でしょ。高校も受かったんだし」
「うるさいな!」
家が壊れるかと思った。冬華の怒鳴る声を聞いたのは初めてだった。まるで別の人のような鋭い声。思わずビクっとしてしまう。
ぎろりとわたしを睨む目の奥に、言いたいことがたくさんあるように感じた。
「……な、なによ。そんなに大きな声出さなくても」
「……」
助けを求めるようにママに視線を送ると、じっと冬華を見続けたまま。左側に少し首をかしげるような感じで。「そんな声出さないの」と怒ってくれれば良いのにと思った。
「お前はバイトしてるだけじゃん!」
「私の気も知らないで、うるさいんだって!」
冬華の肩が大きく揺れている。聞こえないくらいの声で、息を吐き出した。
「は? アルバイトだって大変なんだけど?」
「どうせコンビニなんて立ってるだけじゃんか!」
『わたし』を否定されたような気がして、胸の奥で一気に何かが沸騰したような感覚になった。
「そんなわけないじゃん! あんたもやってみなよ。大変なんだから!」
「あんたなんか……アルバイトもしないで! 少しはママを助けなよ!」
何も考えることなく出てくる言葉。止めることができなかった。言い終わった後に「しまった」と思ったけれど、遅かった。
「……もう、良い」
テーブルに叩きつけるように、バンと箸を置いて自分の部屋へと戻っていってしまった。
「……」
冬華が残した、食べかけのご飯。ギュッと胸を締め付けてくる。
「はあ」
「もうちょっと考えられたんじゃないの?」
「え?」
大きな声を出してしまって、声がかすれているわたしとは対照的に、ママの声は穏やかだった。
「ちょっとデリカシー無かったかもね」
「あなたはそういう所、分かる子だと思ってたけど?」
(……)
「しまったな」と思い、テーブルを見つめることしかできなかった。
シンとなったリビングに、かすかな泣き声が隣の部屋から漏れてきた。



