僕はまたもや玄関の前で立ち止まっている。
今日もまた東歌くんとデートの日。
行き先は、元カノと言ったと話した水族館。
——ではなく、さすがに僕が全力拒否したので別の水族館に行くことに。
「はぁ…なんで僕、東歌くんに元カノの話なんかしちゃったんだろ?」
そうはいっても、口が滑ったのだから仕方がない。
僕は自分にそう言い聞かせて、家を出た。
行き先は東京の水族館。
駅集合にしていて、一緒に池袋駅まで行く。
僕は少し歩いて駅に行って、東歌くんの姿を探した。
「あっ、いた…」
案外にもすぐに見つかって、僕はそんな声をもらした。
ていうか、今日もかっこよすぎる…!!
推しの私服をこんな拝んでいいんですか、神様。
もうほんと…ありがとうございます……。
でも、いつまでもこうやって見てるわけにもいかないし、僕は東歌くんに近寄って声をかけた。
「お待たせ!ごめん、待った?」
僕はいつも通り平静を偽る。
すると、東歌くんは僕の方を見て言った。
「いや、今見たとこ。てか、さっき俺のことじーっと見てたでしょ」
「へっ!?い、いやなんで知って……」
「バレバレ」
そう言って東歌くんはくすくすと笑った。
もー!!なんでバレるの!?超恥ずかしいんだけど!
僕があたふたしていると、東歌くんはまた笑った。
そういえば、東歌くんって僕の前ではよく笑う気がする。
女の子たちの前ではクールダイナー系って感じなのに。
でも、僕も知らなかった一面が見えて、僕は嬉しい。
「笑った、笑った。んじゃ、行こっか」
またさらりと手を繋がれて、僕は少しだけドキッとした。
いつ触れられてもドキドキして、これじゃやっぱり僕が東歌くんを好きみたいだ。
——ドキドキが鳴り止まない。
***
水族館の目の前まで来て、僕はチケットを渡される。
さりげなく買ってくれるところ、好き…!
でも、申し訳ないから返さないと。
「このチケットいくらだっけ?ちゃんと返すから」
「いや、いいよ。俺が買ってあげたかっただけだし。ね?」
そういうふうに言われたら…。
「そっか…。うん、じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」
嬉しいから、素直に受け取っておこう。
それから僕たちは入場して、すぐに外の景色へと出た。
今日は快晴だから、ちょうどいいって感じ。
左を見るとアザラシがいて、その奥にはペンギンが見えた。
「わ〜!かわいい!」
僕はすぐ近寄ってスマホで写真を撮った。
すると、後ろから東歌くんがゆっくりと近寄ってきた。
「はしゃぐじゃん」
「えっ、あっ、ごめん」
「いや?かわいいなーと思って」
「へっ!?」
ぼ、僕がかわいいってこと?
さらっとこういうこと言うし、僕は心臓がドキドキして壊れそう。
「も、もう…!そう言うこと言わないでよね!」
そう言うと、また笑われた。
その後もそんな調子で過ごした時間は、本当に楽しくて嫌なことなんか全部忘れられた。
クラゲとか魚とか、いろんな生き物を見た。
館内カフェで、そうした余韻に浸っていた。
「どう?楽しかった?」
普通の質問だけど、それはきっと元カノとの思い出に対して聞かれていて僕はドキッとした。
でも、考えてみれば元カノのことなんて思い出す暇もないくらいに楽しかったんだ。
「うん。楽しかった。僕、やっぱり水族館好きだな。また行こうね!」
僕の言葉に、東歌くんは口元を緩めた。
それから、僕たちは最後に少しだけ回って帰ることにした。
その時僕は口を開いた。
「僕、本当に水族館が嫌いだった。嫌なことが詰まった場所だったし。実際、別れた後も行ったことがあって。でもやっぱり、吹っ切れてなかったことが嫌で…」
東歌くんは黙って僕の話を聞いてくれた。
「嬉しかったこと、悲しかったこと。思い出が詰まった場所だから、なんとも言えない複雑な感情が込み上げてきてさ。それがどうしようもなく気持ち悪く感じたんだ。でも…今日は違った。今日は、東歌くんと素直に楽しむことができたよ。本当にありがとう」
ニッと僕は笑った。
彼の前で“本当に笑顔”を見せたのは、初めてかもしれない。
偽りだらけの俺は、行動も表情も全部管理して相手に好かれようって接することしかできなかった。
だけど、やっぱり東歌くんは違う。
少しずつ、本当に少しずつだけど本当の自分でいられてる気がする。
「うん。そっか、よかった。月丘には笑っててほしいし」
「っ…!だからズルいんだってば…」
「ん?」
「な、なんでもないです…!!」
僕は東歌くんに表情が見えないように前を歩いた。
さらっとそういうこと言うし、不意に笑うし。
もう…本当に調子狂う。
計画通りいかないところとか、いつもだったら嫌なのにちょっと楽しいとか思ってる自分がいる。
なんで?
——それってきっと、東歌くんが相手だからだ。
まだ、認めたくない。
まだ東歌くんは“推し”なんだ。
今日もまた東歌くんとデートの日。
行き先は、元カノと言ったと話した水族館。
——ではなく、さすがに僕が全力拒否したので別の水族館に行くことに。
「はぁ…なんで僕、東歌くんに元カノの話なんかしちゃったんだろ?」
そうはいっても、口が滑ったのだから仕方がない。
僕は自分にそう言い聞かせて、家を出た。
行き先は東京の水族館。
駅集合にしていて、一緒に池袋駅まで行く。
僕は少し歩いて駅に行って、東歌くんの姿を探した。
「あっ、いた…」
案外にもすぐに見つかって、僕はそんな声をもらした。
ていうか、今日もかっこよすぎる…!!
推しの私服をこんな拝んでいいんですか、神様。
もうほんと…ありがとうございます……。
でも、いつまでもこうやって見てるわけにもいかないし、僕は東歌くんに近寄って声をかけた。
「お待たせ!ごめん、待った?」
僕はいつも通り平静を偽る。
すると、東歌くんは僕の方を見て言った。
「いや、今見たとこ。てか、さっき俺のことじーっと見てたでしょ」
「へっ!?い、いやなんで知って……」
「バレバレ」
そう言って東歌くんはくすくすと笑った。
もー!!なんでバレるの!?超恥ずかしいんだけど!
僕があたふたしていると、東歌くんはまた笑った。
そういえば、東歌くんって僕の前ではよく笑う気がする。
女の子たちの前ではクールダイナー系って感じなのに。
でも、僕も知らなかった一面が見えて、僕は嬉しい。
「笑った、笑った。んじゃ、行こっか」
またさらりと手を繋がれて、僕は少しだけドキッとした。
いつ触れられてもドキドキして、これじゃやっぱり僕が東歌くんを好きみたいだ。
——ドキドキが鳴り止まない。
***
水族館の目の前まで来て、僕はチケットを渡される。
さりげなく買ってくれるところ、好き…!
でも、申し訳ないから返さないと。
「このチケットいくらだっけ?ちゃんと返すから」
「いや、いいよ。俺が買ってあげたかっただけだし。ね?」
そういうふうに言われたら…。
「そっか…。うん、じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」
嬉しいから、素直に受け取っておこう。
それから僕たちは入場して、すぐに外の景色へと出た。
今日は快晴だから、ちょうどいいって感じ。
左を見るとアザラシがいて、その奥にはペンギンが見えた。
「わ〜!かわいい!」
僕はすぐ近寄ってスマホで写真を撮った。
すると、後ろから東歌くんがゆっくりと近寄ってきた。
「はしゃぐじゃん」
「えっ、あっ、ごめん」
「いや?かわいいなーと思って」
「へっ!?」
ぼ、僕がかわいいってこと?
さらっとこういうこと言うし、僕は心臓がドキドキして壊れそう。
「も、もう…!そう言うこと言わないでよね!」
そう言うと、また笑われた。
その後もそんな調子で過ごした時間は、本当に楽しくて嫌なことなんか全部忘れられた。
クラゲとか魚とか、いろんな生き物を見た。
館内カフェで、そうした余韻に浸っていた。
「どう?楽しかった?」
普通の質問だけど、それはきっと元カノとの思い出に対して聞かれていて僕はドキッとした。
でも、考えてみれば元カノのことなんて思い出す暇もないくらいに楽しかったんだ。
「うん。楽しかった。僕、やっぱり水族館好きだな。また行こうね!」
僕の言葉に、東歌くんは口元を緩めた。
それから、僕たちは最後に少しだけ回って帰ることにした。
その時僕は口を開いた。
「僕、本当に水族館が嫌いだった。嫌なことが詰まった場所だったし。実際、別れた後も行ったことがあって。でもやっぱり、吹っ切れてなかったことが嫌で…」
東歌くんは黙って僕の話を聞いてくれた。
「嬉しかったこと、悲しかったこと。思い出が詰まった場所だから、なんとも言えない複雑な感情が込み上げてきてさ。それがどうしようもなく気持ち悪く感じたんだ。でも…今日は違った。今日は、東歌くんと素直に楽しむことができたよ。本当にありがとう」
ニッと僕は笑った。
彼の前で“本当に笑顔”を見せたのは、初めてかもしれない。
偽りだらけの俺は、行動も表情も全部管理して相手に好かれようって接することしかできなかった。
だけど、やっぱり東歌くんは違う。
少しずつ、本当に少しずつだけど本当の自分でいられてる気がする。
「うん。そっか、よかった。月丘には笑っててほしいし」
「っ…!だからズルいんだってば…」
「ん?」
「な、なんでもないです…!!」
僕は東歌くんに表情が見えないように前を歩いた。
さらっとそういうこと言うし、不意に笑うし。
もう…本当に調子狂う。
計画通りいかないところとか、いつもだったら嫌なのにちょっと楽しいとか思ってる自分がいる。
なんで?
——それってきっと、東歌くんが相手だからだ。
まだ、認めたくない。
まだ東歌くんは“推し”なんだ。


