「いらっしゃいませ、お客様」
突然、店の方から男性の声が聞こえてきて、汐里はびくりと体を震わせた。
顔を上げれば、そこにいたのは燕尾服を身に纏った執事風の男が一人。年は三十代くらいだろうか。癖のない艶やかな銀髪は胸ほどくらいの長さがあり、頭の低い位置でひとつに結ばれている。長いまつ毛に縁どられた切れ長の瞳が、汐里に優しく微笑みかけていた。
(何この人、めちゃくちゃイケメン……!)
まるでテレビや雑誌から飛び出てきたようなモデル体型の彼に、汐里の胸がどきりと音を立てる。どこかミステリアスな雰囲気が漂う中性的な顔立ちで、こんな綺麗な人がこの世にいるのかと、しみじみ思う。
「あ、すみません。入口の看板を見たんですけど、ここって何のお店なんですか……?」
汐里が尋ねると、執事風の男はにこりと笑みを浮かべた。
「ようこそ、いらっしゃいました。私は当店の店主を務めておりますリヒトと申します。ここはお疲れのお客様に、ゆっくりとした時間を過ごしていただくための場所。美味しいスイーツとお茶をご提供しておりますので、よろしければ中へどうぞ」
「リヒト」と名乗った彼は、そう言って優雅に一礼した。
怪しいお店じゃないよね?と思いつつ、好みの洋館と「美味しいスイーツ」という言葉に惹かれた汐里は、「じゃあ、お邪魔します」と意を決して中へ入ってみることにした。
(何より、これは夢だし……)
そう自分に言い聞かせ、リヒトの後ろをついていく。すると、そこに広がっていたのは――。
「わぁ……!」
心が躍るような内装に、汐里は感嘆の声を上げた。
床に敷き詰められた赤絨毯に、重厚感のあるアンティーク家具。壁にはどこか外国の川辺が描かれた風景画や、花の絵が飾られていた。頭上には煌びやかなシャンデリアが訪れた客を歓迎するかのように温かな光を放っており、汐里の目が途端に輝き出す。
「中もとっても素敵ですね。私、こういうインテリア好きなんです」
「お気に召されたようで何よりです。さあ、どうぞ。お席にご案内いたしましょう」
どこかワクワクした気持ちになった汐里が案内されたのは、大きな窓から海が見える窓際の座席だった。木製テーブルの前には一人掛けの椅子が一脚置かれており、まるで風景写真のような一角に、また胸がときめいた。
そのまま座席の前に立つと、リヒトがスマートに椅子を引きエスコートしてくれる。窓の外には陽の光が水面に反射して、キラキラと輝く海が見える。リアルな北野の街からは、こんな近くに海は見えないので、やはりこれは夢の中なのだと確信した。
「まず始めに、当店のシステムをご紹介させていただきましょう」
「システム……?」
そこで汐里は初めて、この店のメニュー表を見ていなかったことに気が付いた。もしや、中に入ったら最後……高額な水などを注文させられるのでは、という不安が頭に浮かび身構える。
突然、店の方から男性の声が聞こえてきて、汐里はびくりと体を震わせた。
顔を上げれば、そこにいたのは燕尾服を身に纏った執事風の男が一人。年は三十代くらいだろうか。癖のない艶やかな銀髪は胸ほどくらいの長さがあり、頭の低い位置でひとつに結ばれている。長いまつ毛に縁どられた切れ長の瞳が、汐里に優しく微笑みかけていた。
(何この人、めちゃくちゃイケメン……!)
まるでテレビや雑誌から飛び出てきたようなモデル体型の彼に、汐里の胸がどきりと音を立てる。どこかミステリアスな雰囲気が漂う中性的な顔立ちで、こんな綺麗な人がこの世にいるのかと、しみじみ思う。
「あ、すみません。入口の看板を見たんですけど、ここって何のお店なんですか……?」
汐里が尋ねると、執事風の男はにこりと笑みを浮かべた。
「ようこそ、いらっしゃいました。私は当店の店主を務めておりますリヒトと申します。ここはお疲れのお客様に、ゆっくりとした時間を過ごしていただくための場所。美味しいスイーツとお茶をご提供しておりますので、よろしければ中へどうぞ」
「リヒト」と名乗った彼は、そう言って優雅に一礼した。
怪しいお店じゃないよね?と思いつつ、好みの洋館と「美味しいスイーツ」という言葉に惹かれた汐里は、「じゃあ、お邪魔します」と意を決して中へ入ってみることにした。
(何より、これは夢だし……)
そう自分に言い聞かせ、リヒトの後ろをついていく。すると、そこに広がっていたのは――。
「わぁ……!」
心が躍るような内装に、汐里は感嘆の声を上げた。
床に敷き詰められた赤絨毯に、重厚感のあるアンティーク家具。壁にはどこか外国の川辺が描かれた風景画や、花の絵が飾られていた。頭上には煌びやかなシャンデリアが訪れた客を歓迎するかのように温かな光を放っており、汐里の目が途端に輝き出す。
「中もとっても素敵ですね。私、こういうインテリア好きなんです」
「お気に召されたようで何よりです。さあ、どうぞ。お席にご案内いたしましょう」
どこかワクワクした気持ちになった汐里が案内されたのは、大きな窓から海が見える窓際の座席だった。木製テーブルの前には一人掛けの椅子が一脚置かれており、まるで風景写真のような一角に、また胸がときめいた。
そのまま座席の前に立つと、リヒトがスマートに椅子を引きエスコートしてくれる。窓の外には陽の光が水面に反射して、キラキラと輝く海が見える。リアルな北野の街からは、こんな近くに海は見えないので、やはりこれは夢の中なのだと確信した。
「まず始めに、当店のシステムをご紹介させていただきましょう」
「システム……?」
そこで汐里は初めて、この店のメニュー表を見ていなかったことに気が付いた。もしや、中に入ったら最後……高額な水などを注文させられるのでは、という不安が頭に浮かび身構える。

