「死者に手紙を送ることができるなら、お客様はどんな言葉を綴りますか」
はちみつのように甘やかな微笑みを浮かべ、燕尾服を身に纏った店主は、訪れた客にそう尋ねた。
海と山に囲まれた神戸の街には、開港とともに多くの外国人が居を構えた北野異人館街がある。西洋の赴きを感じるレトロな洋館が立ち並び、観光施設やカフェ、レストランなどとして利用されている建物が多い、神戸有数の観光地のひとつだ。
そんな北野異人館街には、とある不思議な話があった。死者に手紙を届けてくれる洋館があるのだという。
色とりどりの花が咲く洋館の入り口には「喫茶 みなと便り」と描かれた看板が掲げられている。白亜の外壁に、青がアクセントになったその優美な洋館には、迷い込んだゲストを温かく出迎えてくれる一人の青年がいた。
「ようこそ、いらっしゃいました、お客様」
ひとまとめに結ばれた胸ほどまである銀髪、長いまつ毛で縁取られた切れ長の瞳。形の良い唇には、常にこやかな笑みが浮かんでいる。皺一つない黒の燕尾服を品良く着こなす姿は、まさに屋敷の執事といった風貌だった。
赤絨毯が敷き詰められた洋館へ足を踏み入れると、案内された部屋の棚には色とりどりのインク瓶がずらりと並んでいる。そして、窓際に配置されたアンティークの木製机の上には、スイーツとティーカップ。
「わたくしは、死者へ綴った手紙をお届けする冥府の配達人でございます」
男は白い手袋をはめた手を胸に当て、優雅に一礼してみせた。それから顔を上げ、美しく微笑みかける。
「お客様の胸に募ったその想いを、大切な方の元へお届けしませんか」と――。
はちみつのように甘やかな微笑みを浮かべ、燕尾服を身に纏った店主は、訪れた客にそう尋ねた。
海と山に囲まれた神戸の街には、開港とともに多くの外国人が居を構えた北野異人館街がある。西洋の赴きを感じるレトロな洋館が立ち並び、観光施設やカフェ、レストランなどとして利用されている建物が多い、神戸有数の観光地のひとつだ。
そんな北野異人館街には、とある不思議な話があった。死者に手紙を届けてくれる洋館があるのだという。
色とりどりの花が咲く洋館の入り口には「喫茶 みなと便り」と描かれた看板が掲げられている。白亜の外壁に、青がアクセントになったその優美な洋館には、迷い込んだゲストを温かく出迎えてくれる一人の青年がいた。
「ようこそ、いらっしゃいました、お客様」
ひとまとめに結ばれた胸ほどまである銀髪、長いまつ毛で縁取られた切れ長の瞳。形の良い唇には、常にこやかな笑みが浮かんでいる。皺一つない黒の燕尾服を品良く着こなす姿は、まさに屋敷の執事といった風貌だった。
赤絨毯が敷き詰められた洋館へ足を踏み入れると、案内された部屋の棚には色とりどりのインク瓶がずらりと並んでいる。そして、窓際に配置されたアンティークの木製机の上には、スイーツとティーカップ。
「わたくしは、死者へ綴った手紙をお届けする冥府の配達人でございます」
男は白い手袋をはめた手を胸に当て、優雅に一礼してみせた。それから顔を上げ、美しく微笑みかける。
「お客様の胸に募ったその想いを、大切な方の元へお届けしませんか」と――。

