正解のない喫茶店〜十七歳の迷い人たちへ〜

彼は私のびしょ濡れな姿に気がつくと、戸棚から白いタオルを取り出し、カウンター越しに私に差し出してきた。



「あ、ありがとうございます…。って、すみません!床まで濡らしてしまって」



スカートから落ちたしずくが、床にも小さな水たまりを作っていることに気づき慌てて謝る。



「大丈夫だよ、そのうち乾くだろうし。君の方こそずぶ濡れだ。まだ雨もやまなさそうだし、うちで休んでいくといい」



もう一度お礼を伝えてから、受け取ったタオルで濡れた髪を拭く。


タオルからも、爽やかな柔軟剤に混ざってほんのりとコーヒーの香りがした。



「えっと、メニューか何かありますか?」



店内にはお客さんの姿は私の他に誰もいなく、どこに座ったらいいか迷いながらカウンターの真ん中の席に腰掛ける。


ただ店内で休むのも気が引けて、何かを頼もうとメニュー表を探すがどこにもそれらしき物は見当たらない。