「今日さ、蒼真んち行っていい?」
暑い日差しが照りつける中、学校帰りに自販機でスポドリを買いながら葉琉が聞いてきた。
「別にいいけど。今日は的場さんと約束してたんじゃないの?」
自販機からスポドリを取り出すと、すぐにごくごくと喉に流し込む。汗で濡れた髪や嚥下する喉元が目に入り、なんとなく視線を外した。なんだか見てはいけないものを見ている気分になる。
「……っ、そうなんだけどさ、期末テストも近いから、勉強しとかなきゃと思って」
「ケンカでもした?」
「そんなんじゃないって」
口元を手の甲で拭った葉琉は、ため息をつくと「早く帰るぞ」と俺を急かした。
葉琉に二人目の彼女ができたのは中三の5月頃だった。明るくてムードメーカー的な存在の的場さん。友達みたいな感覚でいられるから一緒にいて楽だと言っていたのに、夏休み前には二人の関係はぎくしゃくしていた。理由はよくわからない。ただ、青木さんの時とは明らかに違っていたのは、的場さんとつき合っても彼女が最優先にはならなかったことだ。普通に俺とも遊ぶし、帰りも俺と一緒に帰る方が多かった。俺的にはうれしかったけれど少し心配になったので聞いてみた。「的場さんのことはいいの?」って。そしたら「おまえと一緒にいる方が楽しいからさ」と無邪気な笑顔を浮かべて言われた。
だったら、的場さんと別れて俺とつきあってよ。
俺なら絶対に葉琉を大切にする。葉琉を泣かせるようなことはしない。だって、誰より葉琉のことを理解している自信があるから。
こんなことを強く想いながら、必死に気持ちにフタをする。今まで築き上げてきた葉琉との関係を壊す勇気はない。
「ずるいなぁ、葉琉は……」
うれしいのにうれしくない。複雑な感情を抱えたまま、俺は苦笑いを浮かべる。
「俺だけ彼女いるから?」
「……そういうことじゃない」
「蒼真も、つき合えばいいじゃん」
葉琉の何気なく言った言葉に、俺はまた勝手に傷付いて落ち込む。
つき合えばいいじゃんって軽々しく言えるってことは、俺に恋愛感情がないってことじゃん。そりゃ、そうだよな。彼女より優先されたからって、何を勘違いしてたんだろう。葉琉にとって俺は、ただの幼なじみで、それ以上でも以下でもない。
「俺はたぶん誰ともつき合わないよ」
葉琉は不思議そうにきょとんとする。
「え、なんで?」
俺は慌てて付け足した。
「あ、なんでかわからないけど恋愛に興味がもてないんだよね」
葉琉はふ~んと気のない返事をすると、すぐに口角を上げて笑う。
「じゃあ俺がずーっと一緒にいてやるからさ!」
俺より背が低いのに無理やり肩をくんできた。
「本当に?」
冗談っぽく笑いながら聞くと、満面の笑みで頷いてくれた。
うれしかった。友達として幼なじみとして、一緒にいるという意味だけど。ただのなんの確証もない約束未満のやりとりだけど。ずっと葉琉の隣にいられるのなら、それでいいと思った。そのためなら俺は、葉琉への想いをできるだけ抑えよう。それが俺にとっても葉琉にとっても最善の方法だ。そう思ったんだ。
暑い日差しが照りつける中、学校帰りに自販機でスポドリを買いながら葉琉が聞いてきた。
「別にいいけど。今日は的場さんと約束してたんじゃないの?」
自販機からスポドリを取り出すと、すぐにごくごくと喉に流し込む。汗で濡れた髪や嚥下する喉元が目に入り、なんとなく視線を外した。なんだか見てはいけないものを見ている気分になる。
「……っ、そうなんだけどさ、期末テストも近いから、勉強しとかなきゃと思って」
「ケンカでもした?」
「そんなんじゃないって」
口元を手の甲で拭った葉琉は、ため息をつくと「早く帰るぞ」と俺を急かした。
葉琉に二人目の彼女ができたのは中三の5月頃だった。明るくてムードメーカー的な存在の的場さん。友達みたいな感覚でいられるから一緒にいて楽だと言っていたのに、夏休み前には二人の関係はぎくしゃくしていた。理由はよくわからない。ただ、青木さんの時とは明らかに違っていたのは、的場さんとつき合っても彼女が最優先にはならなかったことだ。普通に俺とも遊ぶし、帰りも俺と一緒に帰る方が多かった。俺的にはうれしかったけれど少し心配になったので聞いてみた。「的場さんのことはいいの?」って。そしたら「おまえと一緒にいる方が楽しいからさ」と無邪気な笑顔を浮かべて言われた。
だったら、的場さんと別れて俺とつきあってよ。
俺なら絶対に葉琉を大切にする。葉琉を泣かせるようなことはしない。だって、誰より葉琉のことを理解している自信があるから。
こんなことを強く想いながら、必死に気持ちにフタをする。今まで築き上げてきた葉琉との関係を壊す勇気はない。
「ずるいなぁ、葉琉は……」
うれしいのにうれしくない。複雑な感情を抱えたまま、俺は苦笑いを浮かべる。
「俺だけ彼女いるから?」
「……そういうことじゃない」
「蒼真も、つき合えばいいじゃん」
葉琉の何気なく言った言葉に、俺はまた勝手に傷付いて落ち込む。
つき合えばいいじゃんって軽々しく言えるってことは、俺に恋愛感情がないってことじゃん。そりゃ、そうだよな。彼女より優先されたからって、何を勘違いしてたんだろう。葉琉にとって俺は、ただの幼なじみで、それ以上でも以下でもない。
「俺はたぶん誰ともつき合わないよ」
葉琉は不思議そうにきょとんとする。
「え、なんで?」
俺は慌てて付け足した。
「あ、なんでかわからないけど恋愛に興味がもてないんだよね」
葉琉はふ~んと気のない返事をすると、すぐに口角を上げて笑う。
「じゃあ俺がずーっと一緒にいてやるからさ!」
俺より背が低いのに無理やり肩をくんできた。
「本当に?」
冗談っぽく笑いながら聞くと、満面の笑みで頷いてくれた。
うれしかった。友達として幼なじみとして、一緒にいるという意味だけど。ただのなんの確証もない約束未満のやりとりだけど。ずっと葉琉の隣にいられるのなら、それでいいと思った。そのためなら俺は、葉琉への想いをできるだけ抑えよう。それが俺にとっても葉琉にとっても最善の方法だ。そう思ったんだ。



