「お待たせしました」
詩織は、店員さんに運ばれてきたパンケーキに目を輝かせて、何枚か写真を撮ると、早速ナイフとフォークを手に取った。五段重ねのパンケーキの上に生クリームとメロンソース、メロンの果肉がのっていて、ミニサイズといえどけっこうなボリュームだ。その横には、三日月の形に切られたメロンとメロンアイスが添えられている。まさにメロンづくしのパンケーキだ。
俺は、ワクワクしながらパンケーキにナイフを入れる詩織をぼんやりと見つめている。ひとくちサイズに切ったものを口の中に入れた瞬間、目を真ん丸にして驚き「おいしー」と頬が緩んでうっとりと味わっている。言葉は少なくとも、ころころ変わる詩織の表情から、このパンケーキがどれほどおいしいかよく伝わってくる。
「俺にもひとくちちょーだい」
「絶対、いや」
俺は、アイスティーの氷をストローで混ぜながら、詩織がパンケーキを食べているのを静かに見守っていた。
ごちそうさまでした、と満足そうに手を合わせてパンケーキを食べ終えた詩織。
「あのさ、」
俺はこのタイミングで詩織に相談をもちかけた。他でもない、蒼真とのことだ。せっかくつき合い始めたのに、意識しすぎてぎくしゃくしてしまうことを話した。詩織は、アップルティーを飲みながら真剣に聞いてくれたが、俺が話し終える頃にはつまらなさそうにスマホをいじっていた。
「聞いてた?」
「うん、聞いてたよ。浅葉くんとの距離感に戸惑ってるんでしょ?」
「そうなんだよ、どうしたらいいと思う?」
「どうもしなくていいんじゃない?」
「え?」
アップルティーを飲み終えた詩織はいそいそと帰り支度を始める。
「そんなに大したことじゃないよ。時間が解決してくれるから」
「いや、俺にとっては大したことなんだって」
「両想いなんだから、二人で試行錯誤すればいいんじゃない?」
「そんな冷たいこと言うなよ。なんかアドバイスとか解決策とかーー」
ガタッと立ち上がった詩織は、キッと鋭い視線を俺に向ける。
「葉琉ってさ、元カノが三人もいるのに、浅葉くんとつき合い始めてから急に恋愛初心者みたいになってるよね」
「え、そうかな……」
「わたしとつき合ってた時間は、恋愛じゃなかったってことだよ」
そう言って、さっさとカフェを出て行こうとする詩織。俺は慌てて会計を済ませて詩織の後を追った。カフェを出たところで詩織はちゃんと俺を待っていてくれた。
「べつに怒ってるわけじゃないよ。はっきりそう突き付けられて、ちょっと寂しいなって思っただけ」
「……ごめん」
「ううん、葉琉は悪くない。これは私の気持ちの問題。葉琉とつき合ってた時は楽しかったし大事にされてるなって思える瞬間もあったから」
寂しそうに笑う詩織に、申し訳ないと思いつつ、今の俺にはどうすることもできない。
詩織に手を伸ばして、ゆっくりと頭を撫でる。詩織の表情が少し緩んで、ふっと口角を上げた。
「バカップルののろけ話を聞かされた気分だわ~」
「だから、そんなつもりはないんだって」
「わかってるよ。美咲と矢野くんの話の方が砂吐くほど甘いから」
「それはそう」
詩織の頭を撫でている手をやんわりと退けられる。
「パンケーキおいしかったから許す」
「おう、ありがとう」
「わたしに相談する時は、おいしいものをおごってもらうっていう決まりにしよっか?」
「おいおい……勘弁して」
詩織はからかうようにクスクス笑って、いこっかと歩き出した。俺は、詩織の存在に感謝しつつ、頭の隅で今月の残りのこづかいを計算していた。
詩織は、店員さんに運ばれてきたパンケーキに目を輝かせて、何枚か写真を撮ると、早速ナイフとフォークを手に取った。五段重ねのパンケーキの上に生クリームとメロンソース、メロンの果肉がのっていて、ミニサイズといえどけっこうなボリュームだ。その横には、三日月の形に切られたメロンとメロンアイスが添えられている。まさにメロンづくしのパンケーキだ。
俺は、ワクワクしながらパンケーキにナイフを入れる詩織をぼんやりと見つめている。ひとくちサイズに切ったものを口の中に入れた瞬間、目を真ん丸にして驚き「おいしー」と頬が緩んでうっとりと味わっている。言葉は少なくとも、ころころ変わる詩織の表情から、このパンケーキがどれほどおいしいかよく伝わってくる。
「俺にもひとくちちょーだい」
「絶対、いや」
俺は、アイスティーの氷をストローで混ぜながら、詩織がパンケーキを食べているのを静かに見守っていた。
ごちそうさまでした、と満足そうに手を合わせてパンケーキを食べ終えた詩織。
「あのさ、」
俺はこのタイミングで詩織に相談をもちかけた。他でもない、蒼真とのことだ。せっかくつき合い始めたのに、意識しすぎてぎくしゃくしてしまうことを話した。詩織は、アップルティーを飲みながら真剣に聞いてくれたが、俺が話し終える頃にはつまらなさそうにスマホをいじっていた。
「聞いてた?」
「うん、聞いてたよ。浅葉くんとの距離感に戸惑ってるんでしょ?」
「そうなんだよ、どうしたらいいと思う?」
「どうもしなくていいんじゃない?」
「え?」
アップルティーを飲み終えた詩織はいそいそと帰り支度を始める。
「そんなに大したことじゃないよ。時間が解決してくれるから」
「いや、俺にとっては大したことなんだって」
「両想いなんだから、二人で試行錯誤すればいいんじゃない?」
「そんな冷たいこと言うなよ。なんかアドバイスとか解決策とかーー」
ガタッと立ち上がった詩織は、キッと鋭い視線を俺に向ける。
「葉琉ってさ、元カノが三人もいるのに、浅葉くんとつき合い始めてから急に恋愛初心者みたいになってるよね」
「え、そうかな……」
「わたしとつき合ってた時間は、恋愛じゃなかったってことだよ」
そう言って、さっさとカフェを出て行こうとする詩織。俺は慌てて会計を済ませて詩織の後を追った。カフェを出たところで詩織はちゃんと俺を待っていてくれた。
「べつに怒ってるわけじゃないよ。はっきりそう突き付けられて、ちょっと寂しいなって思っただけ」
「……ごめん」
「ううん、葉琉は悪くない。これは私の気持ちの問題。葉琉とつき合ってた時は楽しかったし大事にされてるなって思える瞬間もあったから」
寂しそうに笑う詩織に、申し訳ないと思いつつ、今の俺にはどうすることもできない。
詩織に手を伸ばして、ゆっくりと頭を撫でる。詩織の表情が少し緩んで、ふっと口角を上げた。
「バカップルののろけ話を聞かされた気分だわ~」
「だから、そんなつもりはないんだって」
「わかってるよ。美咲と矢野くんの話の方が砂吐くほど甘いから」
「それはそう」
詩織の頭を撫でている手をやんわりと退けられる。
「パンケーキおいしかったから許す」
「おう、ありがとう」
「わたしに相談する時は、おいしいものをおごってもらうっていう決まりにしよっか?」
「おいおい……勘弁して」
詩織はからかうようにクスクス笑って、いこっかと歩き出した。俺は、詩織の存在に感謝しつつ、頭の隅で今月の残りのこづかいを計算していた。



