キラキラ エフェクトがかかった幼なじみに過剰反応して俺の身体はもう限界

 やっと梅雨の時期も終わりを迎え、空は初夏らしく爽やかに晴れ渡っている。期末テストがおわって自由になった俺の心を表しているようだ。

 「蒼真、いこー」

 いそいそと帰り支度を済ませ蒼真の元へいく。

 「おつかれさま。テストどうだった?」
 「蒼真が教えてくれたとこはできた。あとは知らん」
 「えー、補習じゃん」
 「しかたねぇよ。補習がんばるわ」

 二人でさっさと教室をでようとしたら矢野に声をかけられた。

 「なぁ、久しぶりにカラオケいこーぜ」

 俺と蒼真は顔を見合わせる。矢野には俺たちがつき合い始めたことを言っていない。言うと、騒いで面倒くさいことになりそうだから、もう少し落ち着いてから言おうと蒼真と話した。

 「どうする?」
 「俺はべつにいいけど……」

 本当は二人で映画でも見に行こうかと話してたんだけどーー

 「よっしゃ!行こうぜ!」

 矢野に肩を組まれて、ほぼ強制的にカラオケに連行された。最近、三人で遊びに行ってなかったし、たまにはつき合ってやるか。

 カラオケに着くと、いつものように矢野が一番にマイクを取ってノリノリで歌い始めた。その間に、俺と蒼真はしれっと部屋を出てドリンクバーに行く。グラスにメロンソーダを注ぐ。このしゅわっとしたグリーンをみると、カラオケにきたという感じがする。

 「映画はいついこっか?」

 隣の機械でウーロン茶を注いでいる蒼真が聞いてきた。

 「土曜日は? あ、席空いてるかな~」
 
 蒼真がスマホを取り出して素早く確認してくれる。

 「ん~、前の方ならまだ空いてるけど、葉琉は嫌だよね?」
 「できれば後ろがいい」
 「日曜日も空いてないし、夏休みに入ってからいく?」
 「そうだな」

 夏休みの予定が蒼真との約束でうまるのはうれしい。今はつき合い始めてぎこちない距離感だけど、一緒に過ごすうちにきっと自然に振る舞えるようになると思う。だって、会話は普通にできてるし、一緒にいると楽しいのは変わってないから。
 そんな話をしながら部屋に戻ると、相変わらず矢野は一人でも楽しそうに熱唱していた。

 一通り好きな曲を歌い終わったころ、矢野が変な色のドリンクを持ってドリンクバーから帰ってきた。

 「ほぼ全部のドリンク混ぜてきた!」

 色は黒っぽく濁っていて変な匂いがする。お世辞にも美味しそうとは言えない。罰ゲームで飲むにはぴったりだと思うけど。
 矢野はそれを躊躇なく喉に流し込んだ。俺と蒼真は顔を歪める。

 「え、意外とうまいんだけど!蒼真も飲んでみ?」

 グラスを渡された蒼真は「え~」と苦笑しながらおずおずとグラスを口に運び、一口だけごくりと飲んだ。

 「……あ、おいしい」

 マジか……

 「だろ?ほら、葉琉も!」

 蒼真から回ってきたグラスを凝視する。ぼこぼこと泡みたいなのが浮いている。炭酸の泡だと思うが、俺には魔女が作った怪しげな薬に見える。トカゲのしっぽとか入ってそう。

 「無理して飲まなくていいよ」

 蒼真はそう言ってくれたけど、俺だけ飲まないのはなんか負けたみたいで嫌だ。

 「あ……」

 今更気づいたけど、これを飲んだら蒼真と間接キス(矢野もだけど)になるんじゃ……。蒼真の唇と蒼真が口をつけたグラスの縁をみつめる。この間の事故キスを思い出して、急に胸がドキドキしてきた。

 (って、回し飲みなんか今まで何度もしてるだろ。なんで急に意識してんだよ)

 蒼真がこちらをみていて目が合った。意識しているのを悟られたくなくて、すぐにドリンクに視線を戻す。すると、横から蒼真がドリンクを取り上げて、ごくごくと勢いよく口内に流し込んだ。

 「……っ、おいしくて全部飲んじゃった」

 口元を拭いながらテーブルの上にドンッとグラスを置く。

 「マジか!そんな気に入ったのかよ!」

 矢野は調子に乗って変なドリンクをまた作ってきた。蒼真は乾いた笑いを浮かべながら、おいしい……と無理してドリンクを飲んでいた。
 そうこうしているうちに2時間経って、俺と蒼真はカラオケに飽きてスマホをいじっていた。その横で、最後の歌を歌っている矢野。ソファに上がって飛んだり跳ねたりして無駄に元気だ。歌い終わった後に俺の方にダイブしてきて、俺は蒼真の方へ倒れこんでしまった。

 「わ、蒼真、ごめん」
 「いや、大丈夫。葉琉はどこかぶつけてない?」
 「うん、平気」

 俺たちのやり取りをみていた矢野は、「なんか今日、二人変じゃね?」と怪訝な表情をしている。

 「へ?」
 「べ、べつになにもないけど」

 いつもなら多少ぶつかってもごめんの一言でおわるのに、やっぱり俺たちはぎくしゃくしていた。矢野はそれ以上追及してくることはなく、カラオケをでたところで解散となった。

 帰り道、俺たちは何となく気まずくて会話もなくスマホをいじっていた。

 「……葉琉、カラオケ楽しめなかったんじゃない?大丈夫?」

 気まずい空気を払拭するように蒼真が話しかけてきた。

 「蒼真こそ、無理して矢野のドリンク二杯も飲んでたじゃん。そんな気ぃ遣わなくていいから」

 言葉にした後で、少しぶっきらぼうな言い方になってしまったことに気づいた。

 「……うん。そうだよね」

 蒼真はそれ以上話しかけてこなくなり、俺たちはぎくしゃくしたままそれぞれの家に帰った。
 玄関のドアを閉めると、ドアに背を預けてずるずると玄関に座り込む。

 蒼真のことは好きだし、楽しく遊びたいって思うのに、なんでこんなにうまくいかないんだろう……

 頭を抱えて唸っていると、母さんに早く家に上がりなさいと怒られた。