昼休み、購買へパンを買いに行った葉琉を教室で待っているがなかなか戻ってこない。顔色も悪かったし、どこかで倒れているかもしれない。俺はいてもたってもいられなくて葉琉を探しに教室を出た。途中で若宮さんに会って、空き教室の前で葉琉を見たと教えてくれたのでそこへ向かう。
「葉琉!? 葉琉、いるの?」
空き教室は3部屋あるので、廊下から声をかけながら葉琉を探す。一つ目の空き教室の戸を開くと、なぜかイスが勢いよく倒れて、後ろの戸から誰かが出ていくのが見えた。あの後ろ姿は葉琉だ。
「え、葉琉!? 待ってーー」
俺は反射的に葉琉を追いかけた。廊下を曲がったところで追いついたけど、葉琉がなにかに躓いてバランスを崩し、倒れそうになるのを後ろから抱き留めた。
「大丈夫!? 葉琉!」
葉琉にケガがないか、顔をのぞき込んで確認する。葉琉は真っ赤な顔で放心状態。俺の手が葉琉の足首に触れると、少し表情を歪めた。
「立てる? 足、見せて」
見た目からはわからないが、足首が少し腫れている気がする。
「歩けそう? 保健室、行こう」
なるべく葉琉の足に負担をかけないように、葉琉の肩を抱いてゆっくりと立ち上がらせた。本当は背中におぶりたかったけど、今の葉琉には全力で拒否される気がする。
葉琉を支えながら廊下を歩いていると、くっついている部分から葉琉の体温の高さを感じた。鼓動も早い気がする。やっぱり熱があるかもしれない。
ゆっくり歩いて保健室にたどり着き、葉琉をベッドに座らせた。養護教諭が不在だったので救急箱を漁って冷却シートを2枚取り出す。足首と、額にも貼った方がいいかもしれない。
「ちょっと見せて」
しゃがみ込んで、葉琉の足首をみる。さっきより赤くなり腫れている。少し触ろうとしたら、葉琉の身体がびくっと跳ねた。
「……っ!」
「ごめん、痛かった?」
震えがだんだんと大きくなっていく。
「葉琉……?」
心配で顔をのぞき込んだら、葉琉は怯えたように目を潤ませている。俺のことを怖がっている。こんな葉琉は初めてだ。安心させようと手を伸ばすとーー
「触らないで……!」
俺を拒否する言葉に、ぴたっと手が止まる。葉琉は身を守るように身体を縮こませてベッドの上で三角座りをした。
「お願いだから……俺に、触らないでくれ……」
罪悪感が重くのしかかる。葉琉の様子がおかしいのは俺のせいだと気付いていたのに、目をそらして考えるのを放棄したせいで、こんな状態になってしまった。
どうしよう、どうしたらいい。頭が真っ白でなにも考えられない。
「……俺、変なんだ」
葉琉が膝に顔を埋めたまま、なんとか震える声を絞り出した。
「……葉琉?」
「お前が近くにいるだけで、見るだけで、声を聞くだけで、身体が変になる。触れられたら、もう限界なんだよ……」
葉琉の言葉を聞いてごくりと喉が鳴った。俺はこんなにも葉琉を追い詰めてしまっていた。でも、どうしてだろう。俺は葉琉に”目の前の人を好きになる催眠”なんてかけていないのに。
「……たぶん、お前にかけられたやつが、効いてるんだと思う」
ちがう。だって、俺が葉琉にかけた催眠では、こんな症状はでない。
「……もう、わけわかんなくて。お前と普通に話せないのが、こんなに苦しいなんて思わなくて……限界なんだよ」
でも葉琉のこれは、恋をしている人間の反応だ。
「お願いだから……解いてくれ……催眠術」
顔を上げた葉琉は涙目で必死に俺に訴えている。
こんな経緯で知りたくなかった。葉琉はきっと、催眠術のせいで俺のことを好きになったと思い込んでいる。その状態が辛いということは、俺のことを好きではいられないということ。俺は最初から、葉琉の恋愛対象に少しも入っていない。
これはきっと、催眠術を使って葉琉の気持ちを動かそうとした俺への罰なのかもしれない。
「葉琉!? 葉琉、いるの?」
空き教室は3部屋あるので、廊下から声をかけながら葉琉を探す。一つ目の空き教室の戸を開くと、なぜかイスが勢いよく倒れて、後ろの戸から誰かが出ていくのが見えた。あの後ろ姿は葉琉だ。
「え、葉琉!? 待ってーー」
俺は反射的に葉琉を追いかけた。廊下を曲がったところで追いついたけど、葉琉がなにかに躓いてバランスを崩し、倒れそうになるのを後ろから抱き留めた。
「大丈夫!? 葉琉!」
葉琉にケガがないか、顔をのぞき込んで確認する。葉琉は真っ赤な顔で放心状態。俺の手が葉琉の足首に触れると、少し表情を歪めた。
「立てる? 足、見せて」
見た目からはわからないが、足首が少し腫れている気がする。
「歩けそう? 保健室、行こう」
なるべく葉琉の足に負担をかけないように、葉琉の肩を抱いてゆっくりと立ち上がらせた。本当は背中におぶりたかったけど、今の葉琉には全力で拒否される気がする。
葉琉を支えながら廊下を歩いていると、くっついている部分から葉琉の体温の高さを感じた。鼓動も早い気がする。やっぱり熱があるかもしれない。
ゆっくり歩いて保健室にたどり着き、葉琉をベッドに座らせた。養護教諭が不在だったので救急箱を漁って冷却シートを2枚取り出す。足首と、額にも貼った方がいいかもしれない。
「ちょっと見せて」
しゃがみ込んで、葉琉の足首をみる。さっきより赤くなり腫れている。少し触ろうとしたら、葉琉の身体がびくっと跳ねた。
「……っ!」
「ごめん、痛かった?」
震えがだんだんと大きくなっていく。
「葉琉……?」
心配で顔をのぞき込んだら、葉琉は怯えたように目を潤ませている。俺のことを怖がっている。こんな葉琉は初めてだ。安心させようと手を伸ばすとーー
「触らないで……!」
俺を拒否する言葉に、ぴたっと手が止まる。葉琉は身を守るように身体を縮こませてベッドの上で三角座りをした。
「お願いだから……俺に、触らないでくれ……」
罪悪感が重くのしかかる。葉琉の様子がおかしいのは俺のせいだと気付いていたのに、目をそらして考えるのを放棄したせいで、こんな状態になってしまった。
どうしよう、どうしたらいい。頭が真っ白でなにも考えられない。
「……俺、変なんだ」
葉琉が膝に顔を埋めたまま、なんとか震える声を絞り出した。
「……葉琉?」
「お前が近くにいるだけで、見るだけで、声を聞くだけで、身体が変になる。触れられたら、もう限界なんだよ……」
葉琉の言葉を聞いてごくりと喉が鳴った。俺はこんなにも葉琉を追い詰めてしまっていた。でも、どうしてだろう。俺は葉琉に”目の前の人を好きになる催眠”なんてかけていないのに。
「……たぶん、お前にかけられたやつが、効いてるんだと思う」
ちがう。だって、俺が葉琉にかけた催眠では、こんな症状はでない。
「……もう、わけわかんなくて。お前と普通に話せないのが、こんなに苦しいなんて思わなくて……限界なんだよ」
でも葉琉のこれは、恋をしている人間の反応だ。
「お願いだから……解いてくれ……催眠術」
顔を上げた葉琉は涙目で必死に俺に訴えている。
こんな経緯で知りたくなかった。葉琉はきっと、催眠術のせいで俺のことを好きになったと思い込んでいる。その状態が辛いということは、俺のことを好きではいられないということ。俺は最初から、葉琉の恋愛対象に少しも入っていない。
これはきっと、催眠術を使って葉琉の気持ちを動かそうとした俺への罰なのかもしれない。



