キラキラ エフェクトがかかった幼なじみに過剰反応して俺の身体はもう限界

 俺の家で催眠術を試そうということになり、家に招いたが、二人ともマンガを読んでくつろいでいる。俺は、最近ハマっているレモンのグミを口に放り込んでスマホをいじっていた。このまま二人が催眠術のことなんて忘れて、普通に遊んで帰るだけだったらいいのに。

 「なぁ、そろそろやろうぜ」

 俺の願いは天に届かなかったらしい。矢野の声掛けを合図に葉琉がマンガを閉じて催眠術の本を開いた。

 「じゃあ、葉琉はイスに座ってくださーい」

 葉琉をイスに座らせると、矢野が葉琉の肩を揉み始める。

 「リラックスして?」

 矢野が、葉琉の耳元で小さな声で囁いた。吐息が耳にかかったのか、葉琉はくすぐったそうにじたばたしてケラケラ笑っている。

 「ちょ、ふざけんなよ」
 「だって、くすぐったいんだよ」

 俺は二人の間にさりげなく割って入った。

 「俺がしていい?」

 矢野が葉琉から離れて、俺が葉琉の肩に手を置く。そしてゆっくりと肩をほぐしていく。

 「あ~~さすが蒼真……めっちゃ気持ちいいわ……寝ちゃいそう」

 葉琉が目を瞑ったところで、ヴッとスマホが震える音が聞こえた。矢野がすぐスマホをチェックする。

 「あ、やべ。俺、行かなきゃ」
 「行くってどこに?」
 「なんか美咲ちゃんが大変らしい」
 「じゃあ今日やめとく?」
 「続きは二人でやっといて。明日、報告しろよ」

 じゃあ、と手を振って部屋を出て行ってしまった。言い出しっぺの矢野が帰ってしまったので、これはもう中断するしかーー

 「蒼真~今なら俺、催眠術かかるかもしんない」

 イスの背もたれに身体を預け眠そうに目をこすりながら甘えた声を出している。

 「……いや、矢野帰っちゃったし、今日はやめない?」

  脱力してふにゃふにゃしている葉琉がかわいくて誘惑に負けそうになる。

 「ん~~そっか~……このまま寝ちゃおうかな~~」

 イスに座ったまま目を瞑ってしまった葉琉。

 「葉琉、寝るならベッドで寝な」

 軽く頬を叩いてみたけど、移動する気はないらしい。

 「蒼真が運んで~~」

 伸ばされた手を取り、引っ張り上げるとそのまま俺の方へ倒れてきて、俺ごと後ろのベッドへ押し倒された。

 「ちょ、重いんだけど……」

 葉琉の髪が頬に触れてくすぐったい。

 「へへっ、おやすみ~」

 俺の肩口に顔を埋めたまま寝ようとする葉琉。葉琉の体温、匂い、心拍数。五感が全て葉琉に反応して俺の心臓は忙しなくなる。こんなに至近距離で葉琉を感じるのは久しぶりだ。ため息をついてから、虚無になるために真っ白な天井を見上げて、葉琉の髪にゆっくりと指を通していく。

 「あなたはだんだん眠くなる~」

 葉琉がクスクスと笑う。そのたびに愛おしい重みを感じて胸が痛む。

 「結局やるのかよ~」

 吐息が耳をかすめた。理性が崩れそうだ。このままどうにかしてやろうか、なんてよくない考えが頭を過る。葉琉の髪を撫でていた手を、葉琉の背中に回す。とんとんとあやすように背中を叩く。

 「葉琉……」

 名前を呼ぶと、またクスクスと笑った。

 「俺は赤ちゃんかよ」
 「まだ起きてたの……」

  時間を確認しようとスマホに手を伸ばす。隣にあった催眠術の本が目に入り、なんとなくページをめくった。

 「……こうして身体くっついてても寝れるの、蒼真だけかも。俺の抱き枕になってよ」

 冗談だということはわかっているつもりだけど、致死量の”葉琉”を浴びたせいか、理性が音を立てて崩れていくのを感じた。
 至近距離、葉琉の耳元でゆっくりと穏やかに、催眠のための言葉を口にする。葉琉は聞いているのかいないのか、しゃべらなくなってしまった。それからすぐに寝息が聞こえてきて、葉琉は本当に寝てしまった。俺は本を閉じてサイドボードに置いた。

 「……なにやってんだよ、効くわけないのに」

 それからゆっくりと起き上がり、葉琉を起こさないように静かにベッドから移動した。さすがにずっとくっついていたら自分がなにをするかわからない。

 「おやすみ、葉琉……」

 もう一度、葉琉の髪を撫でて、俺は自室から出た。